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――僕たちは、しばらくの間、時間が停止したように抱き合っていた。
10分くらい経過したところで、僕はフェリアから体を離す。
『現在時刻』
時刻を確認すると、まだ【13:33】だった。
『ロッジ』
扉を召喚して、中へ入る。
フェリアが中へ入ったことを確認して、『ロッジ』の扉を戻す。
入り口の扉が消え去り、壁となるのを確認してから、楽な格好に着替える。
『装備6換装』
そして、フェリアも戦闘用の装備からメイド服に着替えさせる。
『フェリアの装備6換装』
そして、4つある6人掛けテーブルの入り口に近い左側のテーブルの入り口側の真ん中の席に腰をかける。ここが僕の定位置なのだ。
フェリアは、いつも通り、僕の右斜め後ろに移動して控えた。
『体は疲れてないけど、疲れた……』
僕は、圧倒的な敗北感と自己嫌悪を感じていた。
『ああ……何もしたくないなぁ……』
テーブルに突っ伏す。
「ご主人様?」
フェリアが僕の行動を不審に思ったのか問いかけてくる。
「ごめん、ちょっと反省中……」
「何を反省なさることがあるのですか? あの状況で生きて帰ってこれたのは、ご主人様の手腕によるものです」
「でも、君の忠告を無視してトロール狩りに行った結果がコレだよ?」
「今回の経験は、次に生かせますわ」
確かにそうだ。死んだわけではない。次こそ、トロールを
『それにしても、
トロール達は、僕たちが洞窟内に入っても姿を見せずに奥のほうまで歩いていったところで一斉に包囲してきた。あれじゃ、どんな高レベルの冒険者パーティでもひとたまりもないだろう。あの状況で切り抜けられたこと自体が幸運だったと言える。僕たちのレベルがトロールよりも少し上だったことも逃げられた要因の一つだろう。
『どうすれば勝てる?』
トロールの強さは、一体ならそれほど苦労せずに倒せるレベルだ。問題は、その数。確認する余裕が無かったけど、洞窟内を埋め尽くしているようにも見えた。もしかしたら、恐怖で
強力な装備と魔法、それから戦術が必要だろう。
まずは、装備を更新する。
『所持金』と念じて軍資金を確認する。
―――――――――――――――――――――――――――――
所持金……1975680.25ゴールド
―――――――――――――――――――――――――――――
『オークの砦』で150万ゴールド以上も稼げたようだ。
『さて、問題は、何を作るかだ……武器か? 防具か?』
僕は、トロールとの戦闘を思い出してみる。
正面の敵は、2体でも対応できていた。問題は側面や後方だ。フェリアが背後を守ってくれていたが、右や左の敵の方へ向いたときには、短時間だが後方にも
もし、壁際だったら、壁を背にしてフェリアと並んで右前方と左前方に分担して戦えば、何時間でも戦えたと思う。
「フェリア、トロールと戦ってみてどうだった?」
「はい、強敵でした。しかし、一体なら問題なく倒せると思われます」
「そういえば、洞窟を出たとき君が光ったように見えたけど、もしかして
「はい、お恥ずかしながら、一度死んでしまいました」
「僕のせいだね。もっと早く君を帰還させていれば……君から離脱した直後に帰還させても良かったのに……」
「いいえ、
「
『――――!?』
その話を聞いて、僕はある作戦を閃いた――。
―――――――――――――――――――――――――――――
装備については、武器を優先して作るべきと判断した。
・アダマンタイトの打刀+100
・アダマンタイトの打刀+50
・アダマンタイトのヒーターシールド+20
・回復の指輪 ×2
そして、これらの装備を作った。
『アダマンタイトの打刀+100』は、ダメ元で作ってみたら、やっぱり装備できなかった。103個の『アダマンタイト鋼』を使った超強力武器なのだが……。分解しようかとも思ったが、お金には余裕があるので、とりあえず、この装備は置いておいて、コレが装備できるようになるまでレベルアップすることを目標とする。勿論、人間には装備不可能なものかもしれないので、一年後とかに装備できないようなら分解しようと思う。
『アダマンタイトの打刀+50』は、『アダマンタイトの打刀+100』が装備できなかったので、作ってみたら、こっちは装備できた。装備できるギリギリのポイントを探そうかとも思ったが、武器でバッタバッタとトロールを倒そうとは思っていないので、
『アダマンタイトのヒーターシールド+20』は、フェリア用に作った装備だ。代わりに『アダマンタイトのヒーターシールド+3』は、僕が貰うことにした。
『回復の指輪』は、今回の作戦の要となる装備だ。まず、【魔術作成】で【エレメンタルヒール】の10倍の回復量を持つ魔法を作り、そのレシピから刻印石を作り、それを5個の『魔法石』を追加して指輪にしたものだ。ポイントは、『魔法石』を5個追加しているという点で、術者のMPを消費せずに魔法を発動することができるのだ。
ベースとなった、【エレメンタルヒール】の強化版魔法は、『グレート・エレメンタルヒール』と名付けたが、不要なので体には刻印していない。また、発動条件を付けておいた。
―――――――――――――――――――――――――――――
自動起動条件:体力<70
自動終了条件:体力=100
―――――――――――――――――――――――――――――
体力が7割を切ると自動的に発動するようにしてあるため、装備していれば、念じなくても勝手に発動する。しかも、MPを消費しない。問題は、『魔法石』5個分のMPがどれくらいかということだ。
フェリアによれば、『魔法石』1個で一般的な魔術師の総魔力量に匹敵するという話だが、僕たちのレベルからみると、それほど大した量ではないだろうとのこと。それでも、5個付けておけば、かなりの量のHPを緊急回復してくれるのではないかと思う。
そもそも、この指輪は、【ハイ・メディテーション】の補助装備なのだ。HPの回復がしたいのではなく、【ハイ・メディテーション】発動時にHPを回復させたいのだ。今日のような、絶体絶命の状況で【ハイ・メディテーション】が発動してHPが強制的に5割まで低下してしまうのは危険だと感じたというのが、この装備を作成しようと考えた動機だった。
これらにより、僕たちの装備は、以下のようになった。
『装備1』
―――――――――――――――――――――――――――――
武器:アダマンタイトの打刀+50
鎧:アダマンタイトの胸当て+10
鎧下:アダマンタイトの鎖帷子+10
脚:竜革のズボン+10
兜:アダマンタイトの兜+10
篭手:アダマンタイトの篭手+10
足:竜革のブーツ+10
背中:竜革のマント+10
下着:魔布のトランクス+10
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『装備2』
―――――――――――――――――――――――――――――
武器:アダマンタイトの打刀+50
服:魔布のローブ+100
脚:魔布のスラックス+10
腕輪:アダマンタイトの腕輪+10
足:竜革のブーツ+10
背中:魔布のクローク+10
下着:魔布のトランクス+10
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『装備3』
―――――――――――――――――――――――――――――
右手武器:アダマンタイトの打刀+50
左手盾:アダマンタイトのヒーターシールド+3
鎧:アダマンタイトの胸当て+10
鎧下:アダマンタイトの鎖帷子+10
脚:竜革のズボン+10
兜:アダマンタイトの兜+10
篭手:アダマンタイトの篭手+10
足:竜革のブーツ+10
背中:竜革のマント+10
下着:魔布のトランクス+10
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『装備6』
―――――――――――――――――――――――――――――
上着:コットンシャツ
脚:コットンパンツ
足:革のブーツ
下着:魔布のトランクス+10
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『装備7』
―――――――――――――――――――――――――――――
服:浴衣
足:下駄
下着:魔布のトランクス+10
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『フェリアの装備1』
―――――――――――――――――――――――――――――
武器:アダマンタイトの打刀+20
鎧:ミスリルの胸当て+5
鎧下:魔布のボディスーツ+5
腰:魔布のスカート+5
篭手:竜革の篭手+5
脚:魔布のニーソックス+5
足:竜革のブーツ+5
背中:竜革のマント+5
下着:黒のブラジャー
下着:黒のパンティー
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『フェリアの装備2』
―――――――――――――――――――――――――――――
右手武器:ミスリルのショートソード+5
左手盾:アダマンタイトのヒーターシールド+20
鎧:ミスリルの胸当て+5
鎧下:魔布のボディスーツ+5
腰:魔布のスカート+5
篭手:竜革の篭手+5
脚:魔布のニーソックス+5
足:竜革のブーツ+5
背中:竜革のマント+5
下着:白のブラジャー
下着:白のパンティー
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『フェリアの装備3』
―――――――――――――――――――――――――――――
武器:アダマンタイトの打刀+20
鎧:竜革の胸当て+5
鎧下:魔布のボディスーツ+5
腰:魔布のミニスカート+5
篭手:竜革の篭手+5
脚:魔布のニーソックス+5
足:竜革のブーツ+5
下着:黒のブラジャー
下着:黒のパンティー
指輪:回復の指輪
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『フェリアの装備4』
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武器:ミスリルの弓+5
矢筒:アダマンタイトの矢+1 ×8
鎧:竜革の胸当て+5
鎧下:魔布のボディスーツ+5
腰:魔布のミニスカート+5
篭手:竜革の篭手+5
脚:魔布のニーソックス+5
足:竜革のブーツ+5
下着:赤のブラジャー
下着:赤のパンティー
指輪:回復の指輪
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『フェリアの装備5』
―――――――――――――――――――――――――――――
頭:メイドカチューシャ
首:黒のチョーカー
服:フェリアのメイド服
篭手:アダマンタイトの格闘用篭手+10
脚:黒のストッキング&ガーターベルト
足:アダマンタイトの格闘用ブーツ+10
下着:青のブラジャー
下着:青のパンティー
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『フェリアの装備6』
―――――――――――――――――――――――――――――
頭:メイドカチューシャ
首:黒のチョーカー
服:フェリアのメイド服
腕輪:フェリアの腕輪
脚:黒のストッキング&ガーターベルト
足:竜革のブーツ+5
下着:白のブラジャー
下着:白のパンティー
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
『フェリアの装備7』
―――――――――――――――――――――――――――――
服:浴衣
足:草履
指輪:回復の指輪
―――――――――――――――――――――――――――――
次に魔法の作成にかかる。
あの数のトロールを殲滅するには、広範囲に作用する高威力な攻撃魔法が必要だろう。
トロールは、ゲームなどでは、火に弱いということになっていたと思うので、火属性の魔法がいいだろう。
【フレイムウォール】を展開したときのことを思い出す。トロールは、ギチギチに詰まっていたので、動けずにダメージを受け続けていた。あまり効果がなかったようだが、それは【フレイムウォール】の威力が弱いからだろう。
もっと、短時間に広範囲に強力なダメージを入れるのが得策だが、【ファイアストーム】のような一瞬の攻撃魔法ではマナ効率が悪いと思う。【フレイムウォール】のようにジワジワと継続ダメージを与えるが、そのジワジワが洒落にならないくらい痛いというものがいいだろう。つまり、強力な広範囲DoT――Damage over Time:時間の経過で継続ダメージを与える――攻撃だ。
【魔術作成】→『改造』
とりあえず、【フレイムウォール】を選んで、どんなスペルなのか見てみて、可能なら改造しよう。
『変更可能項目』には、『サイズ』『ダメージ量』『効果時間』という項目がある。
『サイズ』を見ると、長さ・幅・高さとなっている。長さを20倍、幅を1000倍、高さを2/3に設定する。100メートル×100メートル×2メートルのつもりだ。
『効果時間』は、1/12と短くする。およそ5分だ。
『ダメージ量』は、僕が設定できる限界まで設定した後、2割ほど戻す。これで、僕の最大MPの8割を使った魔法となるだろう。
リキャストタイムは、相当長いはずなので、4つは刻印を刻んでおいたほうがいい。規模が大きい攻撃魔法なので簡単にテストもできないし、ベースの魔法が【フレイムウォール】なので、テストの必要はないだろう。
魔法の名前は、適当に【ヘル・フレイムウォール】とした。
所持金は、5万5千ゴールドくらいまで減ってしまった。
―――――――――――――――――――――――――――――
所持金 …………… 55680.25ゴールド
―――――――――――――――――――――――――――――
「フェリア、新しい【魔術刻印】を刻むから、テーブルの上にうつ伏せで寝てくれる?」
「畏まりました」
装備を解除して裸になったフェリアが僕の座っている長椅子の右隣を踏み台にテーブルに登った。四つん這いでテーブルの中央に移動し、そのまま、うつ伏せの状態で身体を横たえる。
僕は、フェリアの裸をあまり見ないように目を伏せた。
僕は、立ち上がってテーブルに上り、フェリアを
「っんんっ……」
【刻印付与】
この魔法は、精霊系の攻撃魔法なので、適当なところに刻むわけにはいかない。
少し考えた末、太ももに刻むことにした。
脚のほうまで下がって、太ももの裏の空いている箇所に左右2箇所ずつ、合計4箇所に刻印を刻む。
「ああんっ」
フェリアの嬌声は無視して、僕は立ち上がり、
「じゃあ、交代だ」
「はい、ご主人さまぁ」
少し上気した顔でフェリアが答える。
『装備8換装』
僕は、裸になってフェリアと交代でテーブルの上にうつ伏せに寝ころぶ。
フェリアが僕の腰辺りに座る。
「っ……ふっ……んっ」
彼女は、僕の脚のほうへ身体をずらしていく。
そして、僕が刻印をしたところと同じ場所4箇所に刻印を刻んでくれた。
刻印は、刻まれても特にその部分が熱くなったりはしない。手を押し当てられただけのように感じるだけだ。
これで準備は整った。フェリアの蘇生魔術の回復を待たないといけないから、決行は明日の午後2時頃だ。
それから僕たちは、フェリアの『倉庫』の床で毛布にくるまって眠った――。
―――――――――――――――――――――――――――――
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