モンスターのポップする文芸部
青野はえる
プロローグ
プロローグ
しかしながら、その平凡の名はあくまで外観でのみ語られている事に過ぎない。
その内情は、多分そこらの高校なんぞとは一線を画すレベルに異形だと思われる。
というのも……。
「出やがったわねバケモノめ、どれ、百戦錬磨のあたしが、一撃御見舞してあげようかしら?」
渡り廊下を挟んで、三棟に別れている校舎。そのうち、特別教室や職員室、事務室等が内蔵されている、特別棟と呼ばれる校舎がある。
「フンッ、
その三階の突き当たりに敷設された、文化交流室と呼ばれる小さな教室。中には、横に長い大きな机と、乱雑に積まれたダンボールの山。後は、引き窓が一つ。
「ひぃぃぃぃっ、来ないでぇぇぇぇっ、何で私ばっかり追い回すんですかぁぁぁぁ!」
そこは元来、出どころのしれない備品を管理するための、物置のような部屋だったのだが。
「グガァァァァァッ!!」
今現在、とある文化部の部室として活用されており。
「あら、何こいつしぶといわね。このっ、このっ。ちょこまか逃げるなあああ。あーもー面倒臭い、くらいなさい、秘儀──ナギサクラッシュ──ッ」
パリーンッ。
……コホンッ。
お前ら……。
俺は、床に粉々になって散りばめられた陶器の破片の前に、無言で立ち尽くした。
右手の握り拳が、いくらか力んで硬直した。
「いい加減にしろォオオオオオッ!!」
放たれた怒りの鉄拳は、目前に腰を据える、犬によく似た小さな獣の脳天に、ジャストミートした。
その獣は、衝撃に耐えかねて後方に退いた後、よろけたまま茶色い塵に変化して、跡形もなく消え去った。
「うへぇ、相変わらずおっかないわねあんた」
そんな彼女に、怒りついでに俺はギロリと眼を飛ばしてやる。
「おい
「こ、これは事故、事故よ。仕方ないじゃない、やつを倒すためなんだから」
「言った、よなあ!?」
室内が、悶えるほどに凍りつく。主に俺のせいで。
部屋の端っこでは、小柄な女の子がガクガク震えながら、様子を伺うようにこちらを覗き込んでいる。一方、椅子に座ってゆったり読書に浸りながらも、時々チラチラと目配せをしてくる、ルックスのいいメガネの長身男。心なしか、呆けたような目付きだ。
「……ごめん……なさい」
冷や汗混じりに、女子は呟いた。
ねつっこく責め立てる気はなかったので、嘆息しつつ、俺は視線を陶器の破片へ移した。
まあいい、後で俺が顧問に謝っておこう。ああ、毎度のことながら、尻拭いはつらい。
まあ、とにもかくにも、この教室は普通じゃない。
備品置き場を借りて作られた、我らが文芸部の部室。ここにはどうしてか、モンスターがひっきりなしに出現してきやがるのだ。
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