あなたの時間、買い取らせて下さい。
男は毎日仕事が退屈で仕方なかった。
「早く仕事が終わらないものか…。」
そんなある時、時間買取業を名乗る者が男に電話をしてきた。
「あなたの時間、買い取らせて下さい。
1時間5000円で買い取りますよ。」
当然、男は怪しんだが、物は試しと1時間分買い取ってもらうと、なんと本当に時間が経過しており、銀行に5000円追加されていたのだ。
「まてよ、いい考えがあるぞ。」
それから、男は会社に出勤する度に例の業者に電話をかけ、時間を買い取らせた。
電話を終えた一瞬で終業の時刻になっており、仕事もきちんとこなした事になっている。得る金額も申し分ない。
男は次第に日々の家事の時間も買い取らせるようになり、気がつけばもう80歳になっていた。
「少々調子に乗ってしまった。時間を幾らか返してもらえないか?」
「お客様、残念ながら時間の返品は不可能でございます。」
仕事も退職し、家内もいない男には物思いに耽るしかする事がなく、仕方なく今までの人生について考えた。すると、男は今までに何も達成していない事に気がついた。
男は達成感を渇望した。
男に残された時間は少ない。
そして…
「あなたの時間、買い取らせて下さい。」
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