掘り出した物

未来の話。テレパシーとでも言うのだろうか、人類は言葉を発せずとも不都合のない段階にいた。


そんな時代、ある男が土の中から思想を発見した。


思想は様々な大きさ、材質があったが、多くの形態は同じであった。


その男は狂ったかのように思想に食い入り、そうしているとデタラメに見える模様には規則性があり、意味を持つ「文字」というものだと気がついた。


そしてこの思想達は、大昔、何らかの組織によって完全に撤去されたものであることが分かった。


全ての思想を理解し、そして顔を上げると、今まで気にも留めていなかったが、この世界に色彩はなく、単一にべったりとしており、道行く人々も全て同じに見えた。否、同じなのだ。


皆一様に同じ服、同じ髪型であり、メイクまで同じなのである。


男は途端にどうしようもない、危機感のような、焦りのような孤独を感じ、その辺に歩いていた女を捕まえて話でもして気を紛らわせようとした。


…そうしようとしたのだが、男はテレパシーを使うことが出来なくなっていた。或いは元からそんなものはなかったのかもしれない。


人類はとうの昔に言葉と発声器官を捨て去っており、今の男にはどうすることも出来ず、呼び?止められた女は、しかし怪訝な顔もせず、眉一つ動かさずに元のように歩いていってしまった。



男は知ってはならぬことを知ってしまったのだと悟った。



果たして、この世界の支配者とは一体何なのだろうか。

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