勇者候補に推薦されたらしい…知らんけど。

篠雪 薊

_始まりの_

story1.『家族』

【ピピピピピピ…】


目覚ましが鳴り朝の到来を告げる。

出来ればこんな音聞きたくないし

朝も来ないで欲しい…まぁ簡潔に述べると寝てたいだけなんだが。


「センにぃ!センにぃ!」

などと考えつつぼーっと天井を眺めていると急に耳元から大きな声で名を呼ばれ、思わず飛び起きる。

「ん"ぁ"!?…サクヤか…。」


今呼ばれた通り俺の名前はセン。

風見 かざみ 仙真せんまだ。

そして今ニシシと笑っているのは妹の

咲夜さくやで多分腹が減ったので

俺に作ってもらおうと起こしたのだろう。


「飯か?」

「うん!お腹空いたのっ!」

なんっつーか、案の定だな…まぁいいんだが。

「今作りに行くから先に着替えとけよ。おにぎりでいいよな?」

「うん!仙にぃのおにぎり好き!美味しいもんっ。」

あーもう可愛いなぁテメェは!



「ねぇ仙にぃ、お買い物行ってきていいデスカ?」

ご飯中咲夜が首を傾け俺を覗き込むとそんなお願いをしてきた。

ポージングが愛らし過ぎる。

「なんでカタコトなんだよ…別にいいけど何買うつもりなんだ?」

「無駄遣いはしないからーっ行ってきまーす。」

おぅ、行ってこ…い……?

ん?えっ、えっ!?

「まっ、えっ今から?」

「すぐ帰って来るデスー!」

いや別にいいんだが流石に食事中に話して食後に出て行くとは思わなかったんだよ。

「あっ忘れてたデスヨ!…お母さんお父さん、行ってきまーすっ。」

慌てて玄関からリビングに戻り

写真に向かってとびきりの笑顔を見せるとバタバタ走り去っていった。


そう、俺たちの両親は既に他界している。

原因は父の不倫と、父も母も自信を責めやすい体質だったことだと思う。

父は不倫したことによる自責の念から自殺し、母も父の苦しみに気づかなかった自分を責め自殺。


「俺らがいるの、忘れてんじゃねぇよ。」

その時俺は13歳、中学に入って少しした頃だった…妹は3歳、まだ幼稚園児だ。

そんな二人の子供を置いて二人して自殺とか馬鹿なのかと言ってやりたい…が、もう言えやしないことくらい二十歳になれば分かる。いや、二十歳じゃなくても分かるか?


まぁ、結論メーワクな親だったっつー

ことだな。



というかアイツ遅くねぇか?

そろそろ帰ってきてもいいはずなんだけどな。

「……ちょっと見にいってやるか。」

俺は立ち上がり玄関へと向かうと

扉に手をかけ外へ押した。

隙間から入り込む風が思った以上に冷たく"うっ"と声をあげた。


「まだ帰ってねぇよな、…そりゃそうか。…ん?」

家に戻ろうとしたがポストに何かが入ってることに気がつき手を伸ばす。

そこにあったのは…

「何だこれ、封筒だよな?黒とかダッセ…中二病かよ。」

そう呟きつつ封筒を開けながらリビングのソファーに座り込む。


文面はいたって単純かつ明快。


だが、内容は飲み込むのにかなり時間がかかるものだった。

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