放課後異世界生活

Hail

飛んできた非日常


この世界には俺たちの知らない、不思議なことが幾つもある。

その中には、知ってしまうだけで今までの日常から一転、非日常の世界へと変わってしまう様なものもあるのだ。

そして俺は知ってしまった。

と言うより、告白されたんだけど。


俺は実の父が何の仕事をしているのか知らなかった。

もちろん聞いたこともあったが、教えてくれなかったのだ。

母さんは知っていたようだけど、今考えるときっと、来るべき時が来たら教えるってやつだったんだな。


「零れい、ちょっと話があるんだが」


居間でテレビを観ていた俺に父さんが話しかけてきた。


「なに、そんな改まって」


「いや、えっとな…」


父さんは家にいる時は大体着物を来ていて、着物の膝下あたりを内側に抑えながら丁寧に胡座をかいた。


「なんだよ、怖えから早く行ってくれって」


「そんな大したことじゃないんだ、そんな」


「なんなんだよ」


「まずこれを見てほしい」


そう言うと父さんは、着物の袖からおもむろに何かを取り出した。


「鍵だ」


「なんの」


鈍い銀色をした鍵を、居間と寝室の間を繋ぐ襖ふすまに挿した。


「そこ鍵穴なんて無いでしょ」


俺の言葉が聞こえていないかのように無視して、父さんは鍵をぐるりと回す。


「開けて見てごらん」


「は?」


「いいから」


重いものを持ち上げるようにゆっくりと腰を上げ、父さんの方に歩いた。


「開ければいいのね」


黙っている父さんを横に、俺は襖を勢いよく開けた。


「はい、開けたよ……え?」


そこにあるはずの寝室は無く、代わりに街が広がっていた。

空は青く澄んでいる。街を行き交う人々は活気に溢れていて、道端にはズラリと露店が並んでいた。


「父さん」


父は黙って襖を閉めた。


「わかった!これは夢だな!」


「零、本題はここからだ」


「やめてくれ父さん、俺は今から起きなければならない」


「いいから聞け、父さん魔王なんだ」


「とりゃぁああ」


俺はガラス戸を突き破ってベランダから外へ落ちた。

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放課後異世界生活 Hail @mobuyuki

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