おーい、僕はここにいるよ

江坂潤

第1話 事故に遭う

気が付いたら、高いところから地上を見下ろすような光景が見えた。交差点にトラックが停まっている。人だかり。パトカーがサイレンを鳴らしてやって来た。


 どうも、俺は交通事故で死んだらしい。


 人間、死んでもしばらく記憶と意識は残るようだ。


 記憶をたどってみる。

 確か、さっき、台所でカップラーメン作ろうとしていたはずだ。

 それで、カップラーメンの蓋をはがして、コンロでお湯を沸かそうとしていたら、コンロの火がなかなかつかない。

 よく見たらコンロの電池が切れていた。

 それで、電池を買いに行こうと自転車でコンビニに向かっていたのだ。

 コンビニの前の横断歩道の青信号が点滅し始めたので、加速して横断歩道を渡ろうとしたら、右側から大きなトラックが突っ込んできた。

 そこから、スローモーションのようにトラックがこちらに近づいてくる。そこまでの映像が記憶に残っているが、そこで映像が途切れている。


 要するに、俺はラーメン作っている最中に、事故に遭って死んだらしい。


 さっきまで、ラーメンを作っていて、それで急に死んだといわれても、実感がない。

 痛いとか、悲しいとか、そういう感覚・感情を味わう間もなく霊になったらしい。

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