2019.02

2.23「alice in rainyland」#29



この島の雨は今にも止みそうで、雲の隙間から光が漏れていた。

「ここでは雨がやむことがあるのね!」

『私が生まれた時、静かな雨が降っていた。その雨はけしてやむことがなかった。』

その人は詩を暗誦するかのように、ここではないどこかを見ていた。

「ここには雨がなかったころの本が残っている」





私は島にとどまり、彼らと一緒に研究を続け

た。彼らというのは、最初に会った彼と二十

七人の人々。二十九人目の私。この島は小さ

く、町はひとつもないけれど、無数の本と星

を見るための建物があった。私たちの、誰一

人として星を見たことはなかったけれど。私

は本を読んだ。とりわけ雲について学んだ。



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