3.14「alice in rainyland」#20




『帆船の操舵法』という本を読んだのは、修

練をしていた頃だ。この国とこの世界のこと

は、一通り書物で知識を得たつもりだったの

に。頭の中で踊っていた世界と目の前で目紛

しく回転する世界は、清々しいほどに乖離し

ていた。雲のその上にある筈の空がオレンジ

色に染まっているのを、最大限に想像する。





雨は、世界を肯定するかのようにオレンジ色

に輝く。ああ。もう。帆船という言葉すら知

らなかったチェシャのほうが、この船を上手

に駆った。雨の国から脱出するために風の言

うままに船を走らせた。舵から離れて錨を下

ろすとチェシャは魚を獲りに行く。たくさん

手に入れたハーブや木の実と一緒に味わう。




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