2018.02

2.11「sifflet de vapeur à distance」




五、六年生の頃、家族が寝静まってから眠る

ようになった。静かな洗面所にいると微かな

汽笛が聞こえる。それはきっと丘を越えた向

こうの湾を行き交う大型船のもの。中学生の

頃、バスケの朝練がある日は、まだ暗い洗面

所で聞いていた。遠い海から汽笛が響いてい

たのだと、大人になった今でも思っている。





―――――――――――――――――――🐈





実家を出るまで何回も聞いたボーっという響

き。今は海の近くに住んでいるけれど、十代

の頃過ごした家から海までは十キロ近く離れ

ていた。砂浜でも漁港でもなく車を輸出して

いるような大きな港。何故か洗面所の窓から

だけ聞こえてきたその音を思い出す。近くに

は大きな港がないからか、久しく届かない。




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