11.18「alice in rainyland」#11




チェシャもすぐに漕げるようになった。細か

い雨粒を散らすように緩やかな風が吹いた。

雨が静かなのはいつものことだとチェシャが

言う。ボートが進むにつれて、風は少しずつ

強さを増した。私には風が吹くことすら珍し

い。遠くの雲から光の帯が伸びていた。それ

は場所を変えて、現れて消えてを繰り返す。





「ピーターが五人、トムが三人来た。リアは

初めてだよ。このマフラーは三人目のトムと

交換したんだ。9オンスのパインナッツとね

。『人は十五歳になったら一人で生きはじめ

る』って三人目のトムが言ってた。俺は十四

歳だから、もうすぐ自分で生きはじめるんだ

、と思った。明後日で、十五歳になるんだ」




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