11.6「alice in rainyland」#7
保存食屋も猫だった。道ですれ違う人たちの
耳も、大体頭の上に生えていた。誰もコート
を着ていない。ここは暖かく昼間は細い雨し
か降らない。私がいたところだけが特別に寒
いのだと保存食屋は言った。この先はもっと
暑くなるからコートを引き取ってやってもい
いと言う。コートを脱いで霧雨の中に出た。
猫ではない人と話した。昔、私がいたところ
からこの島に来たらしい。本当に寒いと、雨
ではなく雪が降るのだとその人は言った。で
もその人の両親が生まれるずっと前から雪は
降っていないのだと。雪の国の本を読んだこ
とがある。その国は白い雪で覆われていた。
大きな湖の表面は厚い氷で閉ざされていた。
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