11.3「alice in rainyland」#5




雲が陰り裾が紫色に光りはじめた。霧が出て

きたようだ。浅瀬を進んで砂岸にボートを引

き上げる。舫い棒は見当たらないけれど道が

森に続いていた。きっと人が住んでいるのだ

ろう。道沿いに地図の看板が立っていた。こ

こは向こう岸ではなく湖の中の島らしい。地

図には川や橋や店や宿の印が刻まれていた。





「このパンで泊まれますか?」

「宿賃はいらない。食事がいるときに払ってくれ」

「ありがとう」

「パンだけでは困るだろう。日持ちのする食料に交換していくといい」

「どうして?」

「ここを訪れるのは遠くまで行く人ばかりだよ。引き返すつもりはないんだろう?」

「雨が、終わるところまで行くわ」




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