10.10「father」




一つだけ、父との良い思い出がある。小学校

の夏休み。台風が直撃して雨戸を閉じて眠っ

ていた。「台風の目に入った」。父が私を起

こした。生き物の目を想って外に出る。雨も

風も止んでいた。夜明けの生温い大気。線路

の向こうに白いアーチが光っていた。分厚い

雲に縁取られた、巨大な分度器のような空。





――――――――――――――――――――🐈





これも『from TABLET』から。最

初に書いたときは「140文字におさまらな

いから」とツイートではなく掌編集に投稿し

ました。おさめられるようになった今、少し

は成長したと言えるのでしょうか。父との良

い思い出は、考えてみるとほかにも少しある

気がします。今すぐには思いつきませんが。




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