10.6「lotus」




夏の間だけ幻想を浮かべていた睡蓮鉢たち。

廃頽のような葉と茎が残る水面は、やがて空

だけを映しはじめる。薄氷を見る朝をいくつ

か数え、泥の中で微睡んでいた茎が眠りから

醒める。水中から伸びた葉が開く。葉の陰か

ら蕾が姿を現す。もう水面は見えない。夏の

庭に浮かび上がる数多の葉と花に埋もれて。




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