攻撃する時どこ狙おう?

ハートを狙え!アナタの心臓どこですか?

 自動車の講習などで応急処置を習うようになったご時世ですが、まだまだ「人間の心臓はどこにある?」と聞かれて「左胸」と答える方は多いと思います。


 でも実際はほぼ中央、心室が左に少し大きくなってるので左胸に手を触れた時に鼓動を感じるだけなのです。


 戦闘系の話を考える為に資料を集めてる方で「ナイフを水平にして肋骨の隙間から心臓を刺す」なんて戦い方を聞いた事があって、中途半端に調べたために左胸に心臓がある”と言う一般常識と合わせて考え――――


 「肋骨の隙間の先に心臓がある。つまり左胸の真ん中あたりに心臓があるんだ! ドラマとかアニメでもそうだし!」


 ――――なんて、思っちゃった方もいるのでは?


 (余談ですが、このナイフを水平にして刺す場合、心臓を隠す様にある中央の胸骨から肋骨の隙間に少しはみ出た部分を狙います)


 そう、心臓が中央にあるんです・・・・。これが問題なんです


 作品をただ読むだけの人なら「へぇ、そうだったんだ」や「うん、知ってる」で済まされる話なんですが。話を考えて作る立場からするとややこしい事になります。





 例を挙げますと―――――

 

悪人「死ね主人公!!」


主人公「うっ!」


 悪人のナイフが主人公の胸に突き刺さった!その光景を見たヒロインが悲鳴を上げる!


ヒロイン「きゃあああああ!主人公!!」


悪人「ハハハ!心臓を刺されちゃお終いだぜ!」


主人公「どうかな!」


 主人公は不敵に笑い銃を抜き悪人を撃った


「パンパンパンパン!」


悪人「ぎゃああ!」


 主人公は悪人を容赦なく射殺し、ヒロインを抱きしめる


主人公「ヒロイン!」


ヒロイン「主人公!よかった。でも胸の傷は!?」


主人公「平気さ」


 そう言いながら主人公は胸ポケットから悪人のナイフで穴の開いた手帳を取り出した


主人公「コイツのお陰で助かったぜ。ちょっとチクッとしたがな」


―――――この様に胸ポケットに何か入っていて助かるシーンは多いですよね? 

学生の頃に真似して胸ポケットに何か入れてた人も居るのでは?





 でも”解剖学的に考えて、胸ポケットの位置に心臓なんてありません”なんて突っ込んだら感動のシーンが台無しです。


 大抵の人は「お話だから」で受け流す演出ですし、気にする事は無いのかもしれません。


 しかし、最近は応急処置を習う機会が増えていますので、心臓マッサージを習った時に「心臓の位置はココ!!」と”常識”として、心臓の位置を知ってる人が増えて来てると思います。


 そうなると今まで「心臓は左胸ある!」を”常識”として認識してた人達が減ってしまい。心臓が左にあるのが創作でもやり辛くなってしまい、こう言った演出が無くなるかもしれません。





 もしかしたら―――――


「バン!」


 悪人は主人公の左胸を撃ちぬいた


主人公「くっ!」


 しかし、主人公は立ち上がり銃を構える。悪人は動揺し、叫んだ


悪人「心臓を撃ちぬかれて何故動ける!? まさかお前は・・・心臓が右にッ」


「パン!パン!」


主人公は悪人がしゃべり終える前に撃った。そして静かにこう言い放つ


主人公「こんな場所に心臓は無えよ、昔の映画じゃあるまいし!」


―――――なんて話も出るかもしれません。もうあるかな?




 何が言いたいかと言うと。作品を書く時に心臓の位置をどうするか迷うんです凄く!


 文字だけなら「心臓を貫いた」と書けば済む話ですが「実は○○が胸ポケットに入っていて助かった」なんて小細工をしようと思うとどうすればいいか・・・


 作風によっては心臓が左胸にあっては許されないでしょう。いつもコメディを書いているので「一般常識を考えたら左胸でいいよな」とは思うのですが・・・




 もしも!胸ポケットに小細工して助かった主人公の後日談で、実はヒロインが本当に常識的だったら――――――


主人公「あの時の手帳、まだ持ってるんだぜ」


ヒロイン「そうなの。せめて部屋に置いてきたら?」


主人公「何言ってるんだ!俺はコイツのお陰で助かったんだぜ!また同じ事が有ったら・・・」


ヒロイン「その穴の開いた手帳じゃ強度が落ちてて、また同じような事が有った時は防げないでしょ。新しいのに買い換えたら?」


主人公「いやでも、コイツは俺のお守りみたいなもので・・・」


ヒロイン「はぁ・・・。今まで黙ってたけどそんな場所に心臓は無いわよ。応急処置の授業で習わなかった? あんた心臓マッサージをする時に左胸押すの?」


主人公「鳩尾から少し上って習ったけど・・・」


ヒロイン「そこよ心臓は!胸ポケット位置に無いでしょ! あの時もしその手帳が無かったら大怪我してたでしょうけど、心臓には刺さらなかったわ! もしかしたら悪人の腕力じゃ肋骨でナイフが止まって大した怪我にもならなかったかもよ?」


主人公「そうだったのか・・・」


ヒロイン「それに私が一番気にしてるのは・・・」


主人公「気にしてるのは?」


ヒロイン「あの時の血が浸み込んでるでしょそれ? そんな物を何時も胸ポケットに入れてるなんて気持ち悪いから止めてよね」


主人公「・・・・思い出は机に仕舞っておくよ」


ヒロイン「そうして。この後文房具屋に行きましょうか、新しいの買いましょう」


―――――常識人ならこう言うはずです。そしてこの常識ヒロインが言いそうな事が話を考えている時に、時々うかんで邪魔するんですよ。


 クソッ!


 アナタは心臓をどこに描きますか?

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