第35話:二度目の電話
プレイデビューから早2週間、週3回でと決まった俺の出勤日は、
さすが売れっ子女優、結城さん。結城さん、と言うのは
計10回ほどの出勤で、俺のプレイ回数は予約・フリーマッチングを含め50回を超えた。
プレイ内容としては、エレベーターシチュ・プレイヤーに浮気を問い詰め逆ギレで捨てられるシチュ・女社長と銀行員シチュ・同窓会抜け出して二人だけで二次会シチュ・結婚式で誓いませんシチュなど覚えきれないほどの経験を積んだ。
フリーマッチングで思いがけず俺と会えた!! とただただ泣き続ける
ともあれ、晴れて昨日付けでランクCへとランクアップを果たした。これでプレイ可能なシチュエーションが大幅に増えた事となる。異世界・異種族・現実では倫理的にアウトな近親相姦的シチュ・店外プレイ、そして女性からの性的嗜好を絡めたシチュ。ちょっと怖い。
オフの日になれば誰かしらに連れ出される。
甘々正妻モードの
そんな瑠璃にちょっとした小物なんかをプレゼントすると、飛び切りの笑顔で喜んでくれる。俺が選んだプレゼント、というのが実にフェイバリットなサムシングなんだそうだ。日本語でおk。
興奮状態で押し倒され、全身を使ってのお礼をされるまでが一連の流れだ。
美少女メイドモードの
ただ、メイドモードの紗雪にちょっかいを出すのが非常によろしい。「いけません旦那様!」なんて言われたらどこまでも行ってしまう。
弟大好き
「他に誰もいないね、お姉ちゃん…」と思わせぶりな事を言うと、「もう、キャストさんがいるでしょ? ……、あとでね?」と上手に誘導しやすいように誘導する事が出来る。これはこれでなかなかに楽しい。
さて話を戻そう。
今日俺がオフの日であるにも関わらずこのオフィスにいるのは、エミルさんとまた電話で話す為である。
俺と個人的にやり取りされるのを嫌い、瑠璃にもエミルさんの電話番号を教えず自分のスマホを通してしか電話させないとは、さすが売れっ子女優のチーフマネージャーというところか。
そこまでの管理をしないと交友関係で週刊誌やその他メディアにすっぱ抜かれる可能性があるのだとか。女優にはプライベートやプライバシーといった物はないのだろうか。
石田さんがエミルさんと繋がった状態のスマホを手渡して来る。
「もしもし、お久しぶりです、
「あれ? 紗丹君やんね? 前と声が違う気がするんやけど……」
ん? 声が違う? あぁ、そう言えば。
「この前お話した時は仕事でカラオケしてたんですよ。ちょっと調子乗って歌い過ぎまして。それで喉がガラガラやったんやわ」
「ん~、紗丹君て誰かの声に似てるって言われた事ない? 芸能人とか……」
芸能人で顔ではなく声で似ている人?そんなん言われた経験はないが。
「いや、ないよ~。顔も特に誰に似てるって言われる事もないし。そもそも僕そんなテレビ見ぃひんし、言われても分からんかも」
おっと、そう言えばあれから結城エミルの出ているテレビ番組はおろか、雑誌も広告も何もかも見ていない。
プライベートは3人との時間、もしくはそれぞれ1人ずつとの時間として全振りされている為、1人で何かするという時間がなかったりする。
ツッコまれたら何て返そうか……。
「……、もしかして私がテレビ出てるとかも見てへんかったり?」
そら来た、先にツッコまれる可能性に気付いたからセーフ。
「見てない、一切見てない。実際にお会いする前に、ドラマとか役柄の入ったエミルさんを見て変に先入観持ったらアカンしさ」
これでどうだ!?
「へ~!! それで。さすがプロのプレイヤーやねぇ、ちょっと関心してしもぉたわぁ」
おっと上手い事誤魔化せた。結構チョロインな感じなのだろうか。
「そうそう、ちょうどCM撮影でさっき日本に帰って来て、明日から3日間オフになってるから、明後日くらいに顔合わせだけでもしときたいんやけど、どうかな?」
石田さんから事前に空港に着いたばかりだと聞いていた。CM撮影だったのか。
「分かりました。そうそう、僕も明日どうやらテレビに出るらしいんですよ。情報系番組でお断り屋が取り上げられるらしくて。何故か僕が今一番勢いのあるプレイヤーやて紹介されるらしいんです。めっちゃ緊張するわ、生らしいよ。エミルさんいっつもこんな緊張感のある仕事してはるなんて、尊敬するわ」
『見てみや!』というお昼の帯番組らしい。もちろん俺は見た事がない。
「へ~、すごいね。これがキッカケで芸能界デビューとかなるんちゃう?」
いやいやまさか、物珍しさで新規アクトレスが増える事はあっても、それはないでしょう。
「またまたご冗談を。そこまで自分の容姿に自信、持ってないですし」
オフィス内にいる女性陣が一斉に俺を見る。何か変な事言っただろうか。
「……、紗丹君ってさ、あ、ゴメン!! ぼちぼち移動するって言われたし、もう切るね。また明後日楽しみにしてます」
「ええ、ではでは~」
通話が終了し、スマホを石田さんへとお返しする。
「紗丹君ってさ、自分がどれくらいのレベルの顔かって自覚、あんまりないの?」
芸能界でチーフマネージャーという大役を担っている石田さんにそう言われるとちょっと傷付くんだが。つまり、そんなに男前ではないよ? という事が言いたいのだろうか。
「どのくらいのレベル、ですか。少なくとも人に不快感を与えるような顔ではないと信じているんですが……」
「いやいやいや、そうじゃなくてね? お
はぁ、ちょっとどういう
困った顔をしていたのだろうか、
「よく分からんが、とりあえず
「そもそもイケメンでも何でもないただの男の人が、こんな女性達に囲まれてるって時点でおかしいと思うはずなんだけど。まぁ自覚ない方がエミルに手を出される可能性低いからいいんだけど」
石田さんは瑠璃だけでなく紗雪と牡丹ともそういう関係であるって事を知っているんだろうか。瑠璃ならば言っていても不思議ではないな。でもそういう目で見られるのはちょっと困るな。
「まぁ何にしても、明後日よろしくね? エミルは私が連れて来るから。場所はプレイフロアになるのかしら?」
「いえ、顔合わせって事でこのオフィスにしましょう。最初だしエミルちゃんも他のアクトレスがいない方が
とりあえずは明日のテレビ取材だな。生でプレイする流れになるんだろうか。生でプレイ、響きが生々しいです。
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