第2話


村川からの相談があった次の日。その日は雨だった。

俺は何事も無かったかのように登校した。俺より先に村川は教室にいた。いつもと同じように、沢山の女子に囲まれて楽しそうに話していた。一体何処に死にたくなる要素があるのか、俺はまだ理解できずにいた。

村川の様子を自分の席から伺っていると、村川と目があった。彼女は「ごめんね」と言いながら俺の方にトテトテ小走りで来た。

「今日からよろしくね、真紀君」

「あー、よろしく……って村川、お前ビショビショじゃねーかよ!着替えろよ。風邪引くぞ」

村川は頭の先から爪先までビショビショで、制服からは水が滴り落ちているほどだった。

「うん、それがね?私もすぐ着替えようと思ったの。そうしたら、女子に囲まれちゃって……」

「それで話してる内に着替えるタイミングを見失ったと」

コクッと首を縦に振る村川。

「素直に着替えてくるって言えばいいじゃねーかよ」

「最初はそう言ったんだよ。そしたらあんまり濡れてないって……みんなそんなもんだって言われて……」

そんなはずは無い。村川はざっと教室を見渡しただけならクラスで一番濡れていると言っても過言ではなかった。そんな子に着替える必要は無いって言う方がおかしな話だった。

「ちょっと待ってろ」

「どーするの?」

「お前が着替えをできるようにする」


「あー。あのさぁ、俺が言うのも変だと思うんだけど、村川ビショビショだから着替えたいって言ってるんだよ。 でも、お前らの話に付き合ってたら着替えられないって村川困ってる」

村川の席の前で話をしていた女子に彼女の今の状況を素直に話した。

「はぁ?何言ってんの?別に二葉ちゃんそんな事言って無かったんだけど。てかあんた誰?二葉ちゃんとどんな関係があるの?」

「俺と村川の関係なんてお前らには関係ない。村川は最初に着替えたいって言ったらしいぞ。それをお前らが無視してたんじゃないのか?」

鋭い目線で睨んでくる女子に対して強めの口調で言った。内心めちゃくちゃ怖い。

「うるせぇんだよ。お前も何か?二葉ちゃんが可愛いからって勝手にお節介焼いてるやつなんだろ?」

「そう思うのならそれでいい」

そう言い捨てて俺はその場を後にした。


俺の席の近くで待っていた村川が心配そうにこっちを見ていた。

「あいつらには言っておいたから。ジャージか何かに着替え来いよ」

「あっ、うん。わかった。じゃ後でね」

そう言って既に靴下を脱いで裸足になっていた彼女は足跡をペタペタ言わせながら教室を出て行った。

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