奏。

(星屑)輝いてるように見える屑でした。

その先は何が見える?

重い扉を開いて、まず私の目に映ったのは、気持ち悪い程の数の人間達。ここからじゃ、一人一人の身体の輪郭すらも明確に見えなくて、何かの集合体のような、そんな風に見えた。きっとそれは、私の心情のせいでもあるんだろう。私はこの中から、毎日五人選んで、ここではない、別の場所へ、別の世界へと送り出す。その選ばれた五人は、死ぬわけでもないし、生まれ変わるわけでもない。ただ、別の世界へ飛ばされる。同じように、他の世界から来た人間を、私は私の世界に受け入れ、その人の様子を唯々、傍観する。

それが、私の仕事。職業神様。とはいえ、私の世界の管理者ってだけで。私の世界の中限定で言っちゃえば、神様ってだけで。私みたいに、世界を造って管理している人は、沢山いるから。その世界を持ってる人達、そう、私達の事を、【奏】と呼ぶ。奏は、響という、全ての創始者から生み出された存在で、人間とはちょっとだけ違う種類のもの。


–響は、全ての創始者であり、光と闇を与え、そして命を与えたものだ–


全ての創始者、ってこと以外は、響がどんなものか、そんな概念すらない。わかってるのは、私達奏を生み出したってこと。この世界のシステムを作ったってこと。本当にそれだけ。


世界には、扉がある。開けてはいけない扉。覗く事も許されない扉の向こうには、真っ暗な空間が広がっている。この空間は、奏が人間達を違う世界に送り出す為の移動空間。本来なら、奏のみであれば、空間移動が出来るが、人間の身であると、その空間移動による大気の変動などに、耐えられないらしい。人間を送り出す際は、移動船を使う。これを操縦できるのは奏だけだから、結局は人間は、この真っ暗な空間の中では、何もできない。


私達奏と人間の大きな相違点を挙げるとすれば、


・奏は何処にいても生存可能。


・人間は自分が住んでいる世界の中のみ生存可能。


という点。最大の特徴は、


・奏は不死である。


・人間は自分が住んでいる世界から出ると、蒸発し死んでしまう。

世界の中では、60年間のみ生存可能となっている。但し、病、事故などでも、簡単に命は無くなる。


ってとこだ。


人間は、脆い。だが、美しい。たったの60年を、美しく生きている。どんな形であれ、それは個性だ。自分で命を投げ捨てる人間もまた、美しい。生き方とは、定められるものではない。みんながみんな、同じ生き方をしたら、つまらないじゃないか。私達奏は、つまらない。みんな、同じだもの。容姿や与えられた名前、思考。それ以外は、全て同じだもの。奏には、「生きてる」って実感がない。そもそも、「生きる」の定義を知らない。



だけど…。

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奏。 (星屑)輝いてるように見える屑でした。 @hoshikuzuo0

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