魔王の玉座から始まる掌編集

竜世界

魔王の玉座の説明だけで文字数がヤバイと思ったらそうでも無かった

「よくぞ来た……勇者よ」

 仲間より一足先に魔王城の中へ突入した俺は魔王と対峙する事に成功した……部屋の中には俺と魔王しかいない。

「長旅で疲れたであろう。特別にこの玉座に座ってもよいぞ……ふふふ、見るがよいこの立派な玉座を!」

 そんな罠に掛かる俺だと思ったのか魔王。ここは罠に掛かるフリをしながら近付いたが、確かに立派な玉座だ……

 両手部分に掛かるであろう2つの髑髏造形はドラゴンの中でもその流線型が美しいと評判のスレンダードラゴンの頭部を意識していて、銀色だが光沢がうっすらと赤く反射する金属を使ってるのか……

 玉座を軽く一周した結果、四つある脚は四大元素を意識し手前の左脚から反時計回りで、力強く巻き上がる火柱、激しく唸りを上げる竜巻、荒れ狂う水柱、適度な密度で組み上げたような岩石の造形……同じく銀色だが、この四つは青い光沢を放つ金属で、背中と座る部分は怪しくも鮮やかな紫色で、金色の刺繍が施され……この金属の光沢はピンク色か……まるで生きてるかのように玉座に分布する刺繍の中央には縦に長い深い色合いで鮮やかな緑色の宝石がはめ込まれ、猫の縦長瞳孔を描くようにオレンジ色の炎が宝石の中で充満している……

「流石の貴様も目が離せまい……この玉座は我が一族に代々伝わる玉座で、初代魔王がある日助ける事となった人間の職人が材料が欲しいと申し出、それに答えた逸品……」

 背中の裏部分には魔王軍の紋章が刻まれているが、一部だけ形が歪み、何かの文字が彫られてたが、その職人の名前か……魔王の瞳は純粋に輝き、罠を仕掛けている様子には見えない……ここは少し、座ってみてもいい気がするが……

「ジョン! 大丈夫? こっちは皆無事よ!」

「こいつが魔王か……とんでもねぇ美女じゃねぇか」

「ワシがあと300年若ければ、この程度の美貌ものともせぬのじゃが……」

「あなた……ワタクシより若く見えるのですが」

 ここで仲間達が辿り着き、一斉に喋り出した。

 見た目ロリのエルフを除けば、皆見た目通りの年齢だ……ここで俺は声を張り上げ、魔王に言った。

「俺が一人の内に攻撃しなかったのは迂闊だったな……覚悟しろ魔王!」

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