It's Show Time
風鈴花
Before the curtain time
それはまるで光り輝く太陽のようで
都会の喧騒からひとつ離れ、青々しい緑に囲まれた場所に石造りの巨大なドームがある。そこは王宮から御影石の街路が真っ直ぐと繋がっており、特別な有事の際にしか使用されることのない、王国屈指の歴史をもつ施設だ。
いまその施設に、王国全土から人々が集まっている。当然、ドームの観客席は全て満員で、内から湧き上がる歓声を耳にするだけのために、ドームの周りにも人だかりが溜まる。
四頭の馬に引かれた貴金属やガラスで華美な装飾がなされた豪奢な馬車が、そんな御影石の街路を通っていく。人々はより一層声高らかにざわめき立ち、それぞれに始まりを予感する。
そのまま馬車は高さ4メートルはあるであろう専用の観音扉の奥へと入っていく。
外でも異様な盛り上がりを見せていた人々の雰囲気は、舞台のある会場内部ではより一層強く、もはや騒がしいという度を越えていた。
「さ、殿下こちらへ」
豪華な馬車から降りた、上質な羊毛の衣類に身を包んだ老人は、そんな熱気を肌で感じ、
「今年も盛り上がっているようで何よりじゃ。さて……今度はわしにどんな景色を見せてくれるかの」
そうつぶやき、その場の観客だれよりも高い席へと腰を下ろす。
その目が見据える先にはひとつの大きな大理石の舞台があった。その舞台を囲むようにして設けられたすり鉢状の観客席は、その全てが舞台に向かうよう造られ、そこでの一挙手一投足を目に焼き付けられるようになっている。もちろん、そこに立つ者は常人では手が届くわけもない、夜空に浮かぶ星に手をかけた者であり、この国を支える者だ。
色とりどりの雛鳥が餌を求めて喚くように、突然として会場にいた全ての人々は喉から声を張り上げた。
そこにいる1万5千人の観客が立ち上がり、口々に熱狂の言葉を発しているのだ。
それは舞台に登場した一人の屈強な体をした男に向けられたもので、高みの観客席に座る国王はそれを満足げな顔で見つめる。
男の背後に居る楽団は、幾重にも重ねられた旋律をひとつにまとめあげ、それら全てを一人の男のために奏でる。
「すげぇ……」
その場にいた一人の少年は、全ての観客が、国王が、楽団が、それら無数の人々の視線と気持ちと行動がただ一人に向けられる様に感嘆を受け、口をついて言葉が出る。
やがて工夫に工夫を重ねられた壮大な音楽は何かが始まるであろう小波のごとく演奏へと変貌し、舞台中央に立つ男が一礼をする。
パーミテン王国筆頭パフォーマー、ヴァンパトリック・グランバニアの演技が、いま始まる。
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