最凶のギルド受付嬢 決定戦!!

ちびまるフォイ

そして、闇ギルドが1つできる

『冒険者ギルドの受付グランプリもついに決勝!!

 ここまで勝ち上がって来た2人を紹介しましょう!!』


ツインテールでミニスカ、いかにも男ウケしそうな女がやってきた。


『ここまで圧倒的な強さを見せてきたブリブリ子!

 名前以外は最高にキュートなギルド受付です! 結婚したい!』


次に入って来たのは、ビン底みたいなメガネを付けた女。


『はい、えっと……地味ジミ子さんでーす。頑張ってくださーい』


ふたりはギルドのカウンターに座って戦いの準備を整えた。


「ジミ子ちゃん、よろしくね♡」

「私、負けないから」


「いやぁ~~ん、怖いぃ~~♪」


くねくねと体をよじると、体の前にで寄せた手が胸のシルエットを強調させる。

観客席にいる冒険者たちのうちいくらかが鼻血で搬送された。


『さぁ! 冒険者ギルド受付グランプリ、開催です!!』


戦い幕が上がった。



ギルドの受付といっても単に座っているだけではない。


やってくるさまざまな冒険者に笑顔で対応し、

ときに理不尽なクレームにもそっと受け流す。


それだけでなく、クエストボードには冒険者が求めるクエストを選別し貼り付ける。

バカみたいに高難度ばかりだとクエスト消化されないし、

弱すぎるクエストばかりだと歯ごたえがなくすぐ飽きられる。


かつ、リピート率。


大陸に点在する冒険者ギルドの中でもまたここに来てもらえるよう、

クエストだけでなくまた来てもらえるような応対を見せなくては……。



『あーーっと!! 序盤にしてブリ子ちゃんの受付には

 多くの冒険者が軒をつらねているーー!!』


「そんな……!」


地味子はまだクエストを張り付けている準備段階にも関わらず

うんこみたいな名前の女のカウンターには長蛇の列ができていた。


「ブリ子ちゃんに会いたくてまた来ちゃったよ」

「えへへ、ありがとうございますぅ~~♪」


「お、俺は……別に普通にクエスト取りに来ただけだし!

 会いたくて会いたくて震えてたわけじゃねーし!」


「え~~ブリ子はすごく会いたかったのにぃ♡」


鼻の下を伸ばした屈強な冒険者はブリ子とのラブロマンスを求めて並んでいる。


「こっちにもクエストありますよーー!」


地味子も宣伝してみるが聞こえないフリをさせられている。

ブリ子の方ではクエストボードにクエストが貼られ、消化されていく。


―――――――――――

内容:ゴブリンの討伐

場所:ラスタ平原

対象:強い人♡

報酬:1G

―――――――――――


冒険者よりもギルドの利益最優先のめちゃくちゃなバランス。

それでもこぞって冒険者はクエストと奪い合って、冒険へとくり出す。


「いってらっしゃ~~い♡」


地味子がいくら笑顔で対応しても、的確なクエスト選出をしても

結局は受付に立つ女の顔面偏差値でどうとでもなってしまう。


「ふふ、地味子ちゃん、全然クエストさばけてないねぇ?」


「……」


「ごめんねぇ、私が勝っても恨まないでねぇ?

 この世界では美人もひとつの才能なの。

 私はそれを最大限有効活用しているだけだ・か・ら♡」


ブリ子側の冒険者はさっさとクエストを終わらせてまた戻ってくる。

地味子側にも多少なりとも冒険者がクエストを受けているがまるで勝てない。


「ブリ子ちゃん! 敵やっつけてきたよ! 君に会いたくって!」


「わぁ~~♥ お強いんですねぇ~~、ブリ子、強い男の人好きですぅ~~」


満面の笑みで答えるブリ子。すかさず次のクエストを提示する。


「次わぁ、こっちの敵さんをやっつけてほしいんですぅ~~♪」

「もちろんだよ!!」


冒険者は意気揚々と冒険へ向かう。

圧倒的なリピート率。地味子に勝ち目はない。


「このままじゃクエストが全然入ってこない……負けちゃう。

 そうだ!」


地味子は会場を出て外にクエストボードを立て直した。


「あははは! 地味子ちゃん、ついに頭おかしくなったぁ?

 会場の外にクエストボードなんて立てたら、

 あたしの客がそっちに流れる可能性もなくなるのに!!」


ブリ子は勝利を確信して大笑い。

今までは、ブリ子のクエストを受けられずにあぶれた冒険者が

多少地味子のクエストに流れていたけれどそれもなくなる。


魔物が出てくる場所にクエストボード立てるなど、

ますます人を遠ざけるだけだった。


 ・

 ・

 ・


『さぁーー! ギルド受付グランプリも時間が間近となってきました!

 ……おや!? これはどういうことでしょう!

 あれほど人気を博していたブリ子さんのカウンターに冒険者がいません!』


アイドルの握手会ほど並ばれていたブリ子のギルドカウンターは

今ではブリ子が頬杖をつくばかりで誰も来ない。


「ちょっとどうなってんのよ!! さっさと戻ってきなさいよ! 脳筋冒険者ども!!」


キレた拍子に厚化粧がぼろぼろ崩れる。

会場の電光掲示板ではお互いのクエスト消化率が掲示される。


ついに地味子がブリ子を逆転していた。


「はぁ!? どうなってんの! なんであんなブスに私が負けるのよ!!」


納得いかないブリ子は会場の外で受付している地味子へと向かった。

カウンターに並んでいるそいつらを見てブリ子は

どうして冒険者が並ばなくなったのかを理解した。



―――――――――――

内容:冒険者の討伐

場所:グルフルの丘

対象:モンスター10匹以上

報酬:5,000G


【備考】

冒険者は剣士が多いパーティとなっています。

接近戦を避け遠くから攻撃して削ってください。

―――――――――――



「1列に並んでくださーーい。

 冒険者に復讐したい気持ちはわかりますが

 クエストはまだまだありますから焦らないでーー」


地味子はモンスターを対象としたクエストを渡していた。

事前に冒険者の情報がわかることからモンスターにはたいそう好評だったとか……。

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