nextday MONDAY

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結局、昨日は懐かしんだだけで何も行動しなかった三人であった。


「何故今日になった」

正臣が二人に問いかける。二人は空を見上げて昨日の事を振り返った。

「えっと昨日は、作戦会議しようと正臣の家に行って、そうしたら写真を見つけてその事について三時間語って夕飯」

正臣は頷く。その後、チラリと美代を見た。

「てことは俺のせい?」

「いや、正臣のせいじゃなくて、正臣の部屋の写真のせいだな」と龍也は二回ほど頭を上下させた。すると、美代が思いっきり龍也の頭を叩いた。

「いってぇ!何すんだよ!」

「ツッコミのあんたがボケに徹してどうするのよ!」

「そうゆうお前もツッコミとかしてんじゃねぇ!」

校門を通り過ぎる人々が、こちらを向く。正臣は深い溜息をついた。

「もー君達ねぇ。今から元久と話すんだから、気引き締めてくださーい」と声をかける。すると、元久が現れた。三人は身構える。

「で、なんだよ」

元久が三人を睨む。さすが、現役不良とあって風格がある。

「私達はあなたが何をしようが勝手だけど、兄妹を傷付けるのは間違ってるよ」

美代が訴えかけるように話す。正臣は美代の後頭部を見つめていた。すると、元久は小さな舌打ちをし、再度睨んだ。

「別にいいだろ?俺ら本当の兄妹じゃねーし」

その言葉に龍也が手を出そうとしたのを、正臣が押しのけ元久の胸倉を掴んだ。元久は少しバランスを崩し、二、三歩下がった。

「お前!俺ら産まれてすぐ親に捨てられて、その中で出会って!兄妹のように慕いあって。それで、高校まできて、今更何やってんだ!」

正臣の目にだんだんと涙が溜まっていく。顔が歪み、歯を食いしばっている。

「正臣…」

思わず龍也が名を呼ぶ。その背中は二人にとても大きく見えた。正臣は手に力を込める。元久は表情を変えない。

「で?なんだよ」

「忘れたのかよ!親が居ないという事実の重みが。孤児院で兄妹みたいだねって言われた時、お前言ったろ!ずっとこの五人で生きていくって!」

正臣の顔はもう取り返しのつかないくらいぐちゃぐちゃになっていた。想いが届くようにと必死に口で紡んだ。が、とうとう正臣の口から嗚咽が漏れるようになって、動かなくなった。すると、後ろから覚えのある手が正臣の頭を覆った。

「篠原先生…」

元久が身構えて口にする。

「元久、あなたは昔から弱々しくて、よく龍也に泣かされて。それでも、絶対に諦めることはしなかったわ。この五人の中では一番度胸があると思うの。だから、それを大切な人の為に使ってほしい」

先生は優しく言葉をかける。元久の顔が少し緩んだ。拳をつよく握りしめている。

「あなたの今一番大切なものは何?不良のお友達?灯台下暗しってこうゆうことよ」

元久は一歩下がると踵を返して全速力で走っていった。追いかけようと龍也も走り出したのを先生が止める。

「先生!」

「あれが彼なりの答えよ。大丈夫と言って、正臣を腕の中に収めた。

「よく頑張ったわね」

顔を赤らめながらも正臣は先生の服を強く握った。龍也と美代は微笑ましそうに目を細めた。

「正臣もまだまだ子供だね」

美代がからかうように正臣の顔を覗き込んだ。正臣はさらに顔を赤らめ視線

逸らした。

「じゃあ、智嘉子のとこに帰りましょうか」

三人は大きく頷き、歩き始めた。

病室のドアを開けると、見覚えのある背中が目に飛び込んだ。

「元久!」

三人同時に叫ぶ。元久はギクリとした表情で、ぎこちない笑顔を見せた。その奥で智嘉子が身体を起こしている。

「智嘉子!」

そして、また同時に叫ぶ。その息のぴったりさに元久と智嘉子はクスクスと笑った。そのあとは、智嘉子を囲んで色々話した。孤児院でのこと、先生のこと、個人個人のこと、そして明日、智嘉子が退院だということ。皆、声を上げて精一杯の笑顔で笑った。すると先生が手を二回叩いた。五人とも先生の方へ視線を集める。

「はい、みんな。私はもうあなた達の面倒は見れないわ。これからはあなた達だけの力で生きて行きなさい。親離れの時期よ」

その厳しい言葉を聞いて皆俯く。中には拳を強く握る者もいた。それを見て、先生は溜息をつく。

「もーしょんぼりしない!何ももう会うなって言ってるわけじゃないのよ。辛くなったらいつでも帰って来なさいね」

皆は一斉に顔を上げる。

太陽は力一杯輝く。五人の道を照らすように空は青く高かった。





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