バカだってやるときはやるんだよ
石松 鳰
Wednesday
俺たちはいつも一緒だった。産まれてすぐ親に捨てられ孤児院で育った…
仲良しな五人組といえば俺たちのこと。血の繋がっている人など知らない孤独の身。そんなことも忘れさせてくれるような五人。智嘉子、美代、龍也、元久。そして、正臣。
今は高校一年。孤児院の協力により、俺たちは高校デビューを果たした…
五月そろそろ暖かくなってくる頃、正臣たちは屋上で昼ごはんを食べていた。
WEDNESDAY
「今日ちょっと寒いね」と智嘉子が背伸びをしながら呟いた。
「そうだねぇ明日はセーター持ってこよ」
美代の言葉に全員が頷く。
「そういえば、今日元久来てないな」
龍也がお弁当の卵焼きを食べながら言う。
「そうだなぁ つーか、いつもいないじゃん」
正臣は頬杖をつきながら答える。
「あっそうそう元久のことなんだけど」と言いかけた美代を遮るように龍也が言う。
「美代お前また情報仕入れてきたのか!?まったくどんだけ情報通なんだよお前は」
そう、美代は昔から情報通だった。どこから仕入れてくるかは不明。取り敢えず怖いぐらいなんでも知っていた。
「で?今回の収穫は?」と龍也が刑事っぽく手を前で組んだ。
「あんたノリノリじゃない。まぁいいけど。この写真見て」と言ってスマホを取り出した。そこには不良と思われる男子が数名と、この真ん中で座り込んでいる男子生徒が一名写っている。
「お前この写真どこで撮った?」
龍也が写真を指差しながらいった。
「これ、誰か分かる?」
美代が写真の端の方に写っている不良の男子を指した。
「えっ俺の質問無視?」
「ちょっと待ってこの男子って…」
「ねぇ聞いてるー?」
「元久?!このくせ毛元久だよ!」
「あの…」
「えっ元久なんで…」
「………」
「えっなに?龍也なんか言った?」
「おっせーよ!気付くの!扱いひでぇ
なぁ。だから、この写真どこで撮った?って聞いてんの」
「あーこれは多分校舎裏」
美代がお弁当を片付けながら言った。
「多分?」と龍也が首をかしげる。
「貰った」と風の如くサラリと言った美代の頭を三人で同時に軽くチョップした。
「えっ?貰ったってなに」
「あんた人間関係どうなってんの?」
と次々にシャウトした。
「まあまあ君たち落ち着きたまえ」
「落ち着けるわけないでしょ!!」
いつもはおとなしい智嘉子が珍しく大声を上げた。
「落ち着かないと見えるものも見えてこないよ」と美代は人差し指を立てながら言った。
「なんか妙にカッコいいこと言うな」正臣が少々呆れ気味に言う。
「じゃあ、順を追って説明するね」
三人がゴクリと唾を飲む。静寂の中、美代がゆっくりと喋り出す。
「まず、私の友達に不良のボスがいるんだけどー」
「ちょっとまてぇーー!!」
龍也アウト。
「えっなに?友達が不良のボスってお前どんな人間関係なんだよ!」
「もー煩いなぁ取り敢えずそこはスルーして」
「おっおう」
龍也が珍しくおとなしく縮こまった。
「その不良のボスが昨日LI○Eで送ってきて」とLI○Eを起動させてトークを見せてきた。
『よぉ橘(美代の苗字)。昨日俺のダチが弱いものいじめしてやがった。俺は平和主義なんでな。止めたんだけどよぉ。あのなんだっけ元久というやつが止めなくってな、まいったぜ』という文面。
「ボスめっちゃいい奴じゃねーか。なんで不良なんかやってんだよ!風紀部入れよ!」
龍也よく今まで我慢した。
「うーんなんか13代目らしくて。ボスのひいひい……じいちゃんがボスだったらしくて」
「なにそれ、ボスって血筋で決まんの?!伝統工芸士的な?!」
龍也のツッコミは止まらない。これもまた風の如く次々にツッコミが出てくる。
「それより、元久結構暴れてるみたいね」
智嘉子が話題を戻す。
「そうだなぁ元久ってひょろっちぃ奴だったよな」
「なんで…」
みんなは俯き誰も目を合わせようとしなかった。
「でね、私今日元久のところ行ってきたんだけど」
一斉に顔を上げ
「お前天才か」と口を揃えて言った。
「顔に複数の傷があった『それどうしたの?』って聞いたら『転んだ』って言われた」
「理由がベタだな」
龍也が呟く。
「まぁそんなもんだろ」
正臣が答える。
「取り敢えず今日みんなで帰ろう」
智嘉子が提案するが
「ごめん。私パス」と美代が手を挙げた。
「なんで?」
「やっぱり私も元久のこと気になるから尾行する。ほっとけないし。やらされてるんだったら可哀想だし」
「そう…じゃあ明日なんか分かったら教えて」
智嘉子が心配そうな顔をして言う。
「オッケー」
すると、午後の授業の予鈴が鳴った。
4人はお弁当を急いで持って各教室に帰っていった。
少し寒かったのは多分この妙な曇り空のせいだろう。
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