友達なんかじゃない

カゲトモ

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「はーなちゃん」

 バンッ、と今日も遠慮なしに勝手口が開かれた。ったく何度言ったらわかるんだ。

「ノックくらいしろ」

「やーね、お手洗いでもないのに」

 へらへらとしながら入って来たのは、裏のオネェスナックのミケ。今日は顔面工事が完了していて、開店準備が早く終って暇だから時間を潰しに来たって感じだ。

「ちっ」

「ちょっと聞こえてるわよ」

 聞こえるように舌打ってんですぅ。

「何よ、可愛くない顔ね」

「生まれつきだよ」

「あらまぁ、お可哀相に」

「そっくりそのまま返すわ」

「ほんっと可愛くない!」

 ぶすーっとこれ見よがしに頬を膨らますけど、へーそれがなんですか? 状態である。三十路の男がすることじゃない。いや、オネェならありか。

 ミケは可愛くないけど。

「って、約束忘れてないわよね?」

「え、なんか約束してたっけ」

 ごめん。マジで憶えてねぇわ。

「んもう! これだからはなちゃんは!」

 ミケは眉根を寄せて俺を睨む。おーこわ。そんなに眉間を寄せると皺になるぞー。なんて。

「新しいお店に行こうって言ってたじゃない」

「あー、あれだ! 世界中のビール飲める居酒屋!」

 確か新しい店が出来たから今度行こうって言ってたあれ・・・

「そうそれよ! 気になるあの子を見に行くぅてやつよ!」

 ちがーう。いや、確かにそんなことも言ってたけども。

「忘れてないし。で、何、約束してたのって明日だっけ?」

「いや、してないけど。もし暇だったら明日はどーかなって」

「えー、休みの日までお前の顔見るとかー」

「こっちだって見飽きてるっつの」

 まぁ別に誰かと約束しているわけでもないしいいんだけど。

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