友達なんかじゃない
カゲトモ
1ページ
「はーなちゃん」
バンッ、と今日も遠慮なしに勝手口が開かれた。ったく何度言ったらわかるんだ。
「ノックくらいしろ」
「やーね、お手洗いでもないのに」
へらへらとしながら入って来たのは、裏のオネェスナックのミケ。今日は顔面工事が完了していて、開店準備が早く終って暇だから時間を潰しに来たって感じだ。
「ちっ」
「ちょっと聞こえてるわよ」
聞こえるように舌打ってんですぅ。
「何よ、可愛くない顔ね」
「生まれつきだよ」
「あらまぁ、お可哀相に」
「そっくりそのまま返すわ」
「ほんっと可愛くない!」
ぶすーっとこれ見よがしに頬を膨らますけど、へーそれがなんですか? 状態である。三十路の男がすることじゃない。いや、オネェならありか。
ミケは可愛くないけど。
「って、約束忘れてないわよね?」
「え、なんか約束してたっけ」
ごめん。マジで憶えてねぇわ。
「んもう! これだからはなちゃんは!」
ミケは眉根を寄せて俺を睨む。おーこわ。そんなに眉間を寄せると皺になるぞー。なんて。
「新しいお店に行こうって言ってたじゃない」
「あー、あれだ! 世界中のビール飲める居酒屋!」
確か新しい店が出来たから今度行こうって言ってたあれ・・・
「そうそれよ! 気になるあの子を見に行くぅてやつよ!」
ちがーう。いや、確かにそんなことも言ってたけども。
「忘れてないし。で、何、約束してたのって明日だっけ?」
「いや、してないけど。もし暇だったら明日はどーかなって」
「えー、休みの日までお前の顔見るとかー」
「こっちだって見飽きてるっつの」
まぁ別に誰かと約束しているわけでもないしいいんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます