4-5

「やっと見つけたぜ。……あの部屋にいねぇんだもんな」


 そんな声を聞いたのは、非常灯の明かりしかない、冷たい質感の廊下を歩いていたときのことだった。レーツェルは声の方へ振り返る。


「失礼。この時間は私も少々忙しいものでして。……もう終わったのですか?」

「優秀な助手だろ?」


 距離は比較的近いのだが、場の闇が濃いために、相手の顔は見えない。ちょうど非常灯の明かりがあるため、こちらの顔は彼には見えているのだろうが。


「どうでした、彼女は?」


 まるでディナーの席で会話するような調子で、レーツェルは彼に尋ねる。


「ああ、殺したよ。邪魔がいたんで、食うのは無理だったがな」

「邪魔?」

「例のお嬢ちゃん連れた討伐屋だよ。どうしようかと思ったぜ」


 男はやれやれといった風に手をひらつかせる。


「……で、どうしたのです?」

「別に何も。擦り傷ぐらいはできただろうが、前言われた通り、大して手は出してないさ。けど、あの姿とはいえ、見られはしたわけだから、証拠と言われれば残っちまったな」

「彼らなら、問題ありませんよ」


 ──と、その後、レーツェルはあることを彼に尋ねた。


「少女の様子はどうでした?」

「どうってのは?」

「好きなように捉えていただいて結構です」


 その言葉に、闇の先にいる彼は、しばしの間考え込む。そして不意に、ぽつりと言った。


「まぁ、あえて言うなら、あの討伐屋にだいぶ懐いてそうだったな」

「……そうですか」


 その言葉の後、二人は黙りこくる。

 重くもないが軽くもない、そんな沈黙が流れて。

 口を開いたのはレーツェルだった。


「明日ですね」

「……なに?」

「明日の夜、彼女を回収します。あなたには、前に話した通りに動いてもらいますが、よろしいですか?」

「…………」


 再び、沈黙。

 そしてあるとき、彼は言った。


「化け物使いの荒いことで」

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