第2話「窓間の記憶」

重さを失ったみたい

音量に負けて

重力に逆らえず

深い ため息の中へと


考え込んでしまって

ふさぎこんだ窓間に

シルエットが映る


どうしても

 忘れられないもの

どうしても 

 頭に占める面影

忘れてしまえない 物悲しさ


そっと 瞼を重くする



どうしても、

 忘れられないものや

どうしても、

 聞きたかった

言いかけて、止めた話し


重さを失ったみたいに


鎮けさが わたしを囚え


木の葉が、回転するように


落ちるべき場所へと、


散った



記憶




肌身はなさず

わたしを困らせ

供にいるもの



ある日の影が

立ち退きを食らい

瞼に残した絵として

控えめに

落ち着いた



透明な、淡い、太陽

色あせてゆく太陽

諦めた色合い

役目を終えた肌

大往生した、わたしの記憶



夜の長さに

諦めが点くとき

窓間に置かれた影

本当は光ではなく

影に

見たいはずの記憶が

見たいはずの顔が

見たいはずの想い出が、

在るはずなのに



ゆらゆら


それは煙で


道端の記憶みたいに


他愛もないけど


少なくともわたしにとって


大切なものなんだよ?




分かってほしかった

言葉の意味を

気づいてほしかった

真剣さを

真心を

あなたの窓間に遺してくれたら、



     いつか、気づいてくれますか?





無のように

乏しい時代の

忘れ時の、あなたへ贈る


瞳に溢れた

夜の記憶











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