「ぼくらのクリスマス」
草詩
第1話「いつもの公園」
なぁ、この世界を滅ぼさねぇか? それとも――。
俺たちが滅んじまうか?
彼女は屈託のない笑顔で晴々と、そう笑っていた。
いつものように。
~~
クリスマスだ。商店街は赤と緑に染まり、目に付く大きな家も光り輝くイルミネーションを着飾って、浮かれ踊っている。ピエロみたいに派手だ。本当に踊らされているのかもしれない。
僕はそんな中を一人で抜けていく。12月の寒空は晴れ渡り、熱を留めてくれる雲も少なく、身震いするほど冷え切っていた。かじかむ手を上着のポケットに突っ込んで、少し急ぎ足。靴越しでも足の指先は冷たかったけれど、こうして少し意識して早歩きすれば身体は温まる。
そうまでして僕がたどり着いたのは、寂れて遊具の撤去されてしまった公園だった。要するに申し訳程度にベンチとトイレのある空き地もどきだ。
「よぉアキ、遅かったじゃん」
彼女と会うのは決まってこの公園だった。トイレから顔を覗かせた彼女は鼻をすすりながら出て来ると、いきなり僕の手を掴んだ。手、洗ったよね?
「ここさみぃからあっち行こうぜ」
「スミ、いつからいたの」
「わかんね。たまに吹く風が冷たいからさ。トイレ入ってたんだけど、くっせーの」
女の子とは思えない口調で、僕を引っ張る小柄な背中は、それでも力強かった。スミは長袖のシャツに半袖の上着を羽織っているだけで、見るからに寒そうだったのに。その手は柔らかく、ほのかに温かかった。
思えば出会った時からスミはこんな感じで、自信満々に。いつでも楽しそうに僕を引っ張っていく存在だった。
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