地球の寿命はあと7日

なすび わかば

第1話 半信半疑

そんなことが夜のニュース番組で

伝えられた。

私は学業とバイトで日々を送る

至って普通の女子大生。

バイト終わりの帰り道で

ニュース原稿を読み上げる声を

鬱陶しい光で溢れている

東京の街中で耳にした。

『地球の終わりが近づいていますが、

それまでにみなさんは何をする予定ですか?』


嘘のようで本当のような話に聞こえた。

だが、そんな言葉には足を止めもしない

程よく酒気を帯びたスーツ姿の

男の人たちは駅に向かっていた。

同じく駅に向かう途中、

どこからか声が聞こえた

『も…う。残り…は…7日…。た、す…けて』

空耳だろう、助けてってなんだよ。

少し怖くなって帰路を急いだ。


家に着いたところで、テレビを

つけてみたがそんなに大きくは

取り上げられていない。

SNSや掲示板を覗いても

話題にすらなっていない。

もし本当ならば

何も知らずに最期を迎えたい

退屈な日々が終わればいい

そんな風に私は思う。

日常なんて消化試合みたいなもの。

心臓が動き血液を循環し、

循環するために息をする。

たったそれだけ。


そんな卑屈なことばかり考えると

また明日起きられなくなるから

そろそろ寝よう。



太陽の光と鳥たちの声で

目が覚めた。

寝ぼけ眼をこすりながら

ぼーっとしていると

夢を見たことを思い出した。

微かな記憶を辿る。

街が混沌として、絶望に近い

この世の終わりのような

真っ黒な空に飲み込まれていく、

先の見えない世界。

でも、あのふわりと浮かぶ

淡い光は何だったのだろうか。

テレビを点け、ニュースを見ていると

また昨夜と同じ内容が流れていた。

『地球の命はあと6日』

1日減った?そんな気がした

いや違うような…

頭の中は少しパニック

だが、そろそろ家を出ないと

講義に間に合わないので

支度を済ませ家を出た。


大学に着くと、絡んでくる

いつもの男の子が来た。

陽奈ひなおはよう。どうしたんだよ?そんな暗い顔しちゃってさ。お前っぽくないな。』

いつもは言い返すが、今日は

そのような気になれなかった。

大地だいち、あんた地球の命について何か見たりした?』

変なやつとか、絡みがエスカレートするかと思いきや

『オレも見た。でも、あんなのデマだろ?オレらはそんなことなんてわかんねーよ。研究者でもまだわかんない話じゃないの?んなのわかってたらオレは大学なんかに来てないわ。』

そりゃそうだ。

私もそう思いたい。

でも何か引っかかるのだ。

まず、昨日聞いた声の正体は誰?


眠くなる講義をどうにか

起きようと頑張っている中

また声が聞こえた。

『陽奈、頼みた…』

はっとして、周りを見た。

隣に座ってる友達が《ルビを入力…》

変な顔して覗いてくる。

講義中なので何事もなかった様に

取り繕った。


家に着き、テレビをつけた。

『地球の寿命はあと5日ということに

ついて、どう思われますか?』

ニュースに出ている芸能人に

話を振る司会者。

普通に考えて、大変なことなのに

みんな平然としている。


まるで、私1人が取り残されたような

気分になった。

漠然と"独り"になった気がした。

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