第七章 繋がりは広がる
233.蒼の管理者
レイアークさんは水の上に浮かんでたけど、気にせずにこっちへ近づいてくる。
今気づいたけど、夜なのに周りが明るかったのは彼が光ってるせいだ。パァって明るいと言うよりは、月の光みたいにほわんと照らしてくれてる感じ。
それと、近づいてきてわかったけどあれ実体じゃない。よく見れば透けてるのがわかる。
「基本、自分の管理してる世界に顕現する以外、ああやって幻影を飛ばすんだよ」
顔を見られてたのかフィーさんが答えてくれました。
「クロノの兄者は別だがな。……本当にあの頃と変わらんな?」
岸に降りてきたレイアークさんは、セヴィルさんより少し大きいくらい。
だけど、セヴィルさんの隣に立つと少し顔が似ていた。
「こう見ると、色はところどころ違うが似てるな?」
「兄様の方が表情あるし、この子の父親の方が似てるよ」
「かもしれんな?」
さて、とレイアークさんは軽く息を吸ってから表情を引き締めた。
「俺が呼ばれたのは、わかってるだろうがカティアについてだ。クロノソティスの兄者が今回同席出来なかったのは、別件があるせいでな?」
僕の今の名前に関係してる方のお兄さんは来れないんだ。
少しだけ、ほっとしちゃったけど。
「……彼女の身体は戻せるのか?」
セヴィルさんが真っ先に聞いたが、レイアークさんもすぐに首を横に振った。
「俺達の兄弟神が、じい様に言われて封印を強化したんだ。理由は、その身体のためだよ。下手に封印が綻ぶと魂と器の波長が合わずに、最悪死ぬ」
「っ⁉︎」
「じい様、まだダメだって?」
「兄者と聞きに行ったが、当分はやめとけとな」
強化された理由が、そんな大変なことだったなんて。
(下手したら、死んじゃう……?)
そんな怖い事になっちゃう可能性があるなんて思わなかった。
「あー……二人して落ち込むな。その最悪がないように俺達が動いてるんだから。な?」
「……はい」
それが無いようにしてくれてるんだから、たしかに落ち込んでちゃいけない。
ペコっとお辞儀すれば、体温は感じないけど大きな手が髪を撫でてくれた。
「トリップ……転移の方法も今のところ不明だ」
「……あの、転生されている人が一人いたんですが」
「その彼女についてもフィーから聞いたが、同じく不明のままだな」
ファルミアさんのことも不明だらけなようだ。
「それについても調べてるから心配するな。それとカティアの髪や眼の色が変わったのは、俺達神の加護が関係してるらしい。髪はじい様、目はクロノの兄者だ。最初に来てた服が青だったのは、出身である俺のとこだからとじい様に確認はとってきた」
「加護……?」
いわゆる、チート特典付きのようなものかな?
「フィーのも混じってるから、想像以上の加護がついてるはずだ。危険が迫った時とかに多分発動するはずだ」
「その割に、先日誘拐されかけた時には何もなかったが」
「誘拐?」
セヴィルさんが大雑把に説明すれば、レイアークさんは考えながらあごに手を添えた。
「おそらく、『完全なる悪意』を持ってなかったからだろうな。窮地に陥ってたとしても、要は懇願だ。命を取ろうとか従わそうとは思ってなかっただろう?」
さすが神様なのか、簡単な説明だけでカイツさんの心境を察せれるなんて凄い。
フィーさんも神様だけど、やっぱり犯罪が多い日本も管理してるからかな?
「加護も万能じゃない。が、命を脅かすなどの危険のついては特に反応しやすいな。小さいのは近づかれにくいのを煽るだけになってしまうから、カティアにわかりやすく言えばケースバイケースで対応してくれるさ」
「臨機応変に?」
「そうとも言うな」
にっと、口端を上げて笑うのは癖なのか、よく似合ってた。
「それと聖樹水を抜いたのも聞いた。蒼じゃ魔法の概念すらないが、こっちじゃ加護も加えてチート特典と思っとけ。水を抜いても力が馴染んだのなら、魔力の保有量やコントロールも変わってくだろう」
「全然実感ないです」
「普段何使うんだ?」
「えっと、料理するのにちょっと」
「せっかく魔法が使えるのに、チートがあんなら思いっきりモンスター倒したいと思わないか?」
「ゲームじゃないんですし、出来ません!」
戦闘狂じゃないんだから、そんな必要ありません!
僕はただの料理人!
「だが、さっき聞いた誘拐されかけたのもあるなら、最低限の自己防衛は習っておけ。フィーも、そこは考え直しただろ?」
「まぁねー?」
「え?」
「カティアには、セリカと別で専門家をつけさせる予定だ」
「え⁉︎」
知らない間にそんなことが決まってただんて!
「ふゅぅ、ふゅぅ!」
ずっとじっとしてたクラウが、レイアークさんのところに行きたいのかジタバタし出した。
彼と目を合わせれば、レイアークさんは軽く両手を広げてくれました。
それを見てから僕もクラウを離してあげた。
「ふゅふゅぅ!」
「聞いてはいたが、マジでちんまいな?」
幻影?越しでも、さっき僕に触れてくれたようにクラウにも触れていた。
クラウは大きな手に甘えてから、ぽふっと彼の腕に抱っこしてもらう。
「その見た目なのに、他の神獣以上に神力必要なんだよねー?」
「孵化するのに相当時間を費やしてたのなら、無理ないか? 俺んとこは霊力も薄くなったから、迂闊に下界に降りれないからなぁ」
「あ、あの、日本にも神獣っているんですか?」
「いるな? 龍やら白い蛇に狼は当然。人間っぽいのもいなくないが大体は氏神だ」
「おお」
伝説上だと思われてたのがちゃんといるだなんて驚きだった。
もう戻れなくても、そこは知れて良かった。
レイアークさんはクラウの頭をぐりぐり撫でてから、思い出したように口を開いた。
「しっかし、こっちは夜か。向こうはまだ昼間だったな」
「レイ兄様がいつでもいーいって言ったじゃない」
「まぁな? さっきまで兄者とじい様のとこにいたがあの人なかなか口を割らない」
「カティアについて?」
「ああ。時期が来ればわかる。カティアにとっても、自分達にとっても。の繰り返しだ」
どんなおじいさんか想像しにくいけど、大体のおじいさんのお話って直接的な言葉が少ないからかな?
「とにかく、こちらの時間流で何年かかるかわからないが運がいい。蒼じゃ成長も寿命も短いから疑われるが、ここははるかに長命で成長期も大分先だ。しばらくは、頭の良い子供と思われるだろう。が」
「「「が?」」」
「そっちのセヴィルが我慢出来るとは思えんな?」
「れ、レイアーク神⁉︎」
「おーおー、そんな顔出来たんだな?」
「カティア来てから多いよー?」
セヴィルさん久々にお顔真っ赤っかで、固まりそうになった。
茶化すレイアークさんはフィーさんと一緒にニヤニヤ笑っていた。
「ま、からかうのはこの程度にしといて。また詳細がわかり次第フィーにこうやって呼んでもらうことが増える。兄者については、すまんが確約は出来ん」
「……何故だ」
息を整えてから、セヴィルさんはレイアークさんに聞く。
「兄者故の特性と言うべきか? 俺やフィー、他の兄弟神と違って兄者は管理する一つの世界を持たない。常に、空間と空間にある狭間を漂う神だからな。だから、だが」
またためるように言葉を止めてから、レイアークさんは大きく息を吐いた。
「兄者は昼寝が趣味で、その狭間の流れに乗ったまま漂うから見つけにくい」
「あの人それだから会合に来ないの?」
「ああ」
ますます、クロノさん?って人の性格がわからない。
記憶を封印されてるから、レイアークさんと同じく思い出せないけど。
「……だが、来るのか?」
セヴィルさんがしっかりとした口調で聞くと、レイアークさんも目を細めて頷いた。
「ああ、あの兄者自ら動き出したからな?」
それと、とレイアークさんはクラウを僕に返しながら楽しそうに笑ってきた。
「この姿でも飲み食いは出来る。次、兄者も一緒だったらお前が得意なピザを食わせてくれないか?」
「え⁉︎」
「兄様、それ言いたくて来ただけじゃ?」
「フィーばっかりいっつも食ってるのがずるいからだ。それと兄者もカティアの料理は食べたいと言伝を押し付けてきたしな」
そう言い切ると、じゃ、って手を軽く振ってからレイアークさんの幻影は消えてしまい、辺りは暗くなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます