232.神霊達の告げた事

 







 ◆◇◆








「ところで、セリカも今日はどうしたの⁉︎ 気絶するくらいの事態になったのは何故?」

「あ、あ、あれ……は」


 アナさんが鬱憤を晴らしてからセリカさんに振り返り、そのセリカさんは内容が内容だったから勢いがしぼんでワタワタし出した。


「エディお兄様も教えて下さらなかったのよ? カティアさんも気になりますわよね?」

「え、まぁ……」

「ふゅぅ」


 あんな状態になられたのは、正直心配になったもの。

 クラウも心配だったのか、こくこくと頷いた。

 僕らの様子にセリカさんはどんどん顔が赤くなっていくが、やがて決意したのか小さく頷く。


「お会いした神霊オルファ様なんだけど……」

「エディお兄様は『似合いの番だ』としかおっしゃらなかったわ」

「そ、それも、だけど……その、異常に私やお兄様の容姿を褒めてくださったの」

「いいことじゃないんですか?」

「それがね……」


 渋々話してくれたことだが、神霊オルファさんのミュラージェイドさんがこう言ったそうだ。



『フィー様には負けるが、なかなかに美しい白磁の肌だねぇ? 紫苑の髪色も柔らかそうで稀有だし、肌がより一層映えるよ。まだまだ成熟には程遠いが、その神王も気に入ってそうじゃないか? 妾には似合いの番に思えるぞ』



 みたいなことをエディオスさんの容姿についてもツラツラ言われたそうで。

 いきなりの賛辞に、セリカさんは羞恥心に耐えきれずああなってしまったらしいです。

 なんともまあ、神霊オルファさんてリーさんも含めて個性派揃いだ。


「絶対、エディお兄様にご迷惑をおかけしたわ!」


 それどころか、気絶状態のセリカさん抱えて全力ダッシュとか色んな表情を見せてくれましたけど。

 上機嫌とかは見せなかったが、お似合いのカップルとか言われたら嬉しいに違いない。

 そう思っていいはず。


「迷惑どころか、きちんと運んでくださってたわよ?」

「そ、それは、今日の収穫祭のためもあったから……」

「あなたこそ自信を持ってよくってよ? エディお兄様が執務を根こそぎ終えてから、サイお兄様と説得しに行くぐらいだったもの」

「根こそぎ、ですか?」

「あ、あの日?」


 お休みを無理に作ったとしか聞いてないけど、自覚される前から行動してたってことは。


(セリカさん愛されてますねぇ……)


 思わずほっこりしちゃうよ。

 言えないのが少し辛いけど。


「……エディお兄様が」


 他にも何か思い当たったのか、セリカさん少し考えられた。


「……そう言えば、僕のところは知ってる神霊オルファさんでしたけど。アナさん達の方は?」

「わたくし達は初めてお会いする方でしたわ。

 ただ、その……言い方は悪いんですが、怠け癖の酷い方でしたわ」


 すっごくリーさんのずぼらなとこと似てるって思ったの、僕だけかな?


「何か言われましたか?」

「キアルをお渡しくださった以外、すぐにお眠りになられましたわ。今回はフィルザス様に無理に言われて任につかれたとか」


 だとしたら、アナさんとサイノスさんが御名手どーのこーのは面倒だから言わなかったのかな?


「何も言われなくて良かったですね」

「本当ですわ」


 複雑な気持ちになるけど、お二人の事情を知っちゃった今は簡単に知らない方がいいかもしれない。

 想いがすれ違いになってたって、アナさん自身がまだ心に深い傷を負ってる状態だ。サイノスさんも気づいてるはずだけど、どうしていいのかもわからない。

 一度、事情を知ってる者同士で援護した方が?


(そうしようそうしよう!)


 僕だって他の人を心配してる場合じゃないけど、僕はまだ体が戻らないからどーしようもない。

 だから、先に解決出来る方を優先しよう。

 絶対僕のことも言われるが、『はい、セヴィルさん大好きです!』ってまだまだ宣言出来ません!






 コンコンコン!






 ノックが聞こえたが、この叩き方には覚えが!

 慌ててクラウを頭に乗せてから扉を開ければ、予想通りフィーさんがいました。

 その後ろにはセヴィルさんも。


「カティア、今いーい?」

「僕だけですか?」

「ふゅぅ?」

「うん、君とクラウかな? ちょっと来て欲しいとこがあるんだー」


 それと夜は冷えるから何か上着を持って来てとも言われたので、アナさん達に出掛ける事を伝えてからクローゼットに入れた上着を出した。

 コロネさん達力作の秋物。

 貴族風だけど、私服スタイルでも着やすいあったかコートだ。


「行ってきまーす」

「「いってらっしゃい(ませ)」」


 先に寝ててもいいとは伝えたけど、大人だからまだ眠たくないだろう。

 それに、幼馴染み同士ならもう少し砕けた態度で恋バナが出来るはず。さっきみたいに手を出すようなことは避けてほしいが。


「どこに行くんですか?」

「んー、泉」

「え⁉︎」


 玄関に向かう途中に聞くと、フィーさんは迷わず答えてくれたがその場所って。


「しーんぱいしないでー? 会わせたい人の都合であそこになっただけだよ」

「こんな夜に?」

「……誰と会わせる気だ?」

「今はなーいしょ!」


 片目ウィンクで誤魔化され、それから外に出て転移の魔法で泉の近くに着くと、フィーさんは僕らに待っててと言った。


「呼び出すのに、少し時間かかるから」


 誰、とはここでも聞けず、フィーさんはすたすたと岸辺に行くと、黒いシャツの袖をめくって水の中に腕を入れた。


『……βξπφαβλθδνογζ』


 何か呪文を唱えてから、水がザバザバと音を立てて揺れていく。

 激しく揺れてく波は、次第に泉の中央に向かっていく。その箇所も、ごぼごぼと水が湧き立ってた。


『ΩΒΔΣΞΚΛΠ!』


 湧き立つ水がザバァと水柱を上げ、落ちてくる水の滴がフィーさんに降り注ぐが彼は気にしなかった。

 それよりも、水が湧き出た場所に浮かんでいた人に僕は目が釘付けになってしまった。


「……久しいな、奏樹かなた。いや、カティアだったか」


 僕の前の名前を知ってる男の人。

 サイノスさんくらいに背が高くて、深い青の瞳に結んだ先が青い以外真っ黒の髪。不思議な模様の青をベースとした服。

 凄いイケメンさんなのはわかる。

 だけど、どこか懐かしい雰囲気を感じたのだ。


「セヴィルもでかくなったな。俺を覚えてるか?」

「……覚えている、レイアーク神」


 元いた世界、蒼の世界の管理者さんでフィーさんがよく口にするお兄さん。

 そして、セヴィルさんが蒼の世界に来た時に会ったらしい神様。


(なんで、思い出せないの……?)


 記憶の繋がりになりそうな人と会えても、やっぱり封印は解けることがなかった。






**********


では、近況報告にも書きましたが、本日よりピッツァに嘘はない!をしばらくの間休載させていただきます((。´・ω・)。´_ _))ペコリ



また戻って来ますのでお待ちください‼︎٩(。•ω•。)و

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