黒猫ムウと夢の守り人と 世楽 八九郎様 紹介文

 ネットで読む小説は、紙媒体より辛いです。


 何かしら感想を述べる前提で読むネット小説は、けっこう神経を使います。


 そして紹介文を書くために再び読み漁りながら情報を拾っていく作業Ge Ki Tu Ra I ☆


 この企画を始める前に買った目薬がついに半分を切りましたし、ブルーライトカットのレンズも汚れが。


 そして……所持金が八万以上減ってる!?←それはスイッチ買ったから。


 なんだこの苦行は。小説を読み続ける地獄というものを創設してもいいのではないかというくらい、そこそこ読みました。小説は好きですけど、小説以外も好きなので色々弊害が出ます。


 今更ぐちぐち言っているのはなぜかというと、当然それに見合うだけの対価を得られたと自分でも感じています、と露骨に良い話に持っていくためです(露骨)。


 言ってしまったら台無しじゃないか。あーいけねてへぺろ。


 みなさんはすごいなあ。


 おもしろい小説をいっぱいかけて。


 こった設定のおはなしをつくれて。


 ぼくにはとてもできない(魔法陣グルグル風)。


 これで私がいかに疲れているかわかっていただけたかと思います。沖縄旅行とかプレゼントしてくれてもいいのですよ?←厚かましさMAX。


 でもこんなに疲れるまでやった甲斐があるというものですよ。


 もしかしたら、今からご紹介するお話は、スケールとしては物足りないのかもしれません。


 もしかしたら、もっと美麗な魅せる文章を使いこなす方もいるかもしれません。


 もしかしたら、完璧な展開や伏線が活きて、物語の盛り上がりでは及ばないのかもしれません。


 もしかしたら、情熱的な人間的やりとりで、もっと胸を打つ作品もあるのかもしれません。


 それでも、私は一番好きになりました。


 私の好み100%の話であるため、それが普遍的な価値観であるとは思いません。


 もちろんですが、この作者様が誰々に劣っているとかそういったことを思っているわけではありません。ただ作家様によって武器は違うだけの話です。


 その武器が、心の奥底を見事に射抜き、巻かれた種が萌芽して、感情に変質していく温かみを感じたのです。


 私にとって好みだったから。


 私にとっては、たったそれだけ。評価させて頂くことに、これ以上の理由なんて必要ありません。


 誰がなんと言おうとも、私が好きになったのでご紹介致します。


 小っちゃな不幸と真っ直ぐな勇気が繋いだ絆の物語、どうぞご賞味ください。











 あなたに夢の世界とそのいもうとを守る力をあげる。その代わりに夢の世界を守る義務を負いなさい。そして私にあなたの×××をちょうだい?




 まだ8歳の幼い少年。浅間悟あさまさとるは、突然現れた夢魔のムウと、出会ったその晩に契約を果たした。


 悪夢ナイトメアに苛まれる妹を守るために、ちっぽけで大きな対価を支払って。


 本当にいいの?


 妹が泣くのは、もっと困るから。








 夢を守る役目を果たしているうちに、8年もの月日は流れ、悟は高校生へと成長していた。

 黒猫姿でサバ缶をねだるほどには、二人の仲は打ち解けていた。


 ほら見ろサバ缶


 高校生にもなってお使いが出来たくらいでドヤ顔しないで欲しいわ。

 よく出来ました。偉いわア・ホ・ル♪


 ……とても、仲良く打ち解けていた。






 二人は、夢の守り人だ。8年間の年月を費やしてきたように、今日も夢の世界の秩序を守るため、ムウに夢へといざなわれる。


 ムウは人型へと変身する。ムウに両目を覆い隠され、手を握られるという行為は、夢の世界へと移転するために必要……なのだが、悟には少し気恥ずかしかった。


 なあ、昔みたいに猫の姿で俺の顔に乗ってもらって、しっぽを掴むってやり方はダメか?

 悟が変態に育って、私はとても悲しい。


 有無を言わさぬムウの罵倒に、悟はもう文句も言えない。


 けどそれは、月日に束ねられた信頼のよう。


 確かな絆のあり方であった。






 夢の世界はネットワークのように縦横無尽に繋がりを見せており、各人に少なからず影響を与えている。

 ネットやSNSの普及に伴い、人は他者から醸し出される負の感情に触れる機会は増大した。


 それは思想に影響を与える。

 それは時代に影響を与える。


 それは夢の世界に、影響を与える。






 負の感情を血肉として、繋がった夢になだれ込む汚れのような化け物、ナイトメアは人の影響により生まれる。

 そして、ナイトメア自身も、夢を繋げる泉への侵攻により、人に対しても影響を与える。


 二人は、現実に影響を、及ぼす、夢の世界を守り続けていた。


 誰かに言われるわけでもなく


 誰から認められるわけでなく




 彼らは戦う。

 夢から取り出す武器を持ち。夢奏器により象る武器は、その夢によって変わっていく。

 その性質も。その用途も。

 どんなに巨大な敵だって、二人はいつも立ち向かっていった。

 確かな時間を重ねた証として、誰にも打ち崩せない信頼の力を持って。

 他に仲間はいない。

 二人きりだから、

 二人しかいないから、


 そして今日も、戦いは終わる。




 戦いを終えた悟は、眠る。

 夢の中で眠るというのもおかしな話。

 そして、夢を見ることは


 決してない。


 それこそが代償。


 力を得る対価。


 妹を守るために得た力は、悟の夢をムウに与えることで成立していた。


 だからもう、悟は夢を見ることはない。




「ゆっくり休みなさい」


「おやすみ……ムウ」


「あなたが私にそれを言うの?」


 クスクスと笑うムウの声。


 夢を奪った張本人に、おやすみだなんて












 ムウは回想し、込み上げる懐かしさに心を揺らしながら、悟の頭を優しく撫でる。

 子供から青年へ。昔はよく頭を撫でてあげたものだが、最近の悟は恥ずかしがって、なかなかさせてはくれないのだ。


 永遠に近しい夢魔の時間。


 儚き有限に縛られた悟の時間。


 成長は変化をもたらす。これからムウを取り残して、悟はドンドン成長を続ける。


 その変化の果てには。


 いつか訪れる、別れ。


 考えても詮無いことかもしれないが、ムウは思い描かずにはいられない。


 いったいいつまで……私は悟の傍にいられるのだろう。


 他の夢魔のように、夢を貪り、イイコトをして糧を得ていけばいいのかもしれない。そうすることで、悟との関係を続けていけるのかもしれない。


 けれども、ムウにはそれができなかった。


 これだから、他の夢魔たちに無垢ちゃんと罵られる。そのことを、とても不満に思う。









 天上に亀裂。


 それは悟が見る夢。大洋に沈む日の光。空は青とも藍とも。風と遊ぶススキに囲まれてダンスを踊っているよう。海に臨む黄昏の草原。


 もう悟自身が見ることは叶わない。


 とても美しいおいしい









 本当に、あなたと出会えたのは僥倖だわ








 チリチリ疼く鼓動の要。


 満たしているのは、罪悪感。


 美しいものを、美しいと語ることしかできない、その無力さはやるせない。


 そして、この美しいものを独り占めにしていること。


 本来であれば、悟が夢のために戦う理由は、


 もうないのだから。










 ……こういうとき、あなたが起きてくれたらって思ってしまうわ……悟……











 少年を糧にした一匹の夢魔も









 矛盾した想いを抱える、一人の女性おんなのこでしか、ない。












 こんなこと。








 絶対に本人の前では、いえないけど。













 黒猫ムウと夢の守り人と


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883750737






 永遠に叶わない願い。


 美しく儚いユメの続きを、いつかあなたと見られたら。














 中編の物語って、もしかしたら一番中途半端な立ち位置かもしれません。


 短編ほどにアイデアと勢いで突っ走るにはきちんとした設定や流れがないと飽きられる。


 どっしりと壮大な世界観を描こうと思えば、長編になっていく。


 そして中編を読むくらいなら、サクッと読める短編。


 読み応えを求めるなら、力量も試される代わりに思いも詰め込める長編。


 なんとなく、中編という中途半端な立ち位置の物語って、読まれにくいんじゃないかと漠然とながら思います。


 この物語も、32000字程度です。


 私も月堕とすキツネと月ウサギという中編を書いていますが、35000字程度で、PVはなかなか伸びませんね(サラッと宣伝と愚痴を混ぜていくスタイル)。


 それでも、ここまで誰かの心を射止める物語もあると言いたかったのです。


 ぶっちゃけた話、15話くらいまでは普通におもしろいなーくらいの感想だったのです(言わなくてもいい事情)。


 けれども、ムウの想いに触れる、16話から19話までを読んだ時、その印象は一変しました。


 今回の好みランキングは、正直このシーンが全てです。素晴らしかった。


 私は、時間の経過と変化が絡む物語が、好きなのでしょう。


 どんな人物にも過去はあって、大小や長短はあれど、少なからず未来はある。


 そんな今までと、これからを意識させるような物語が好きです。

 有限を生きるからこそ過去と未来、そして今を描く物が好きなのです。






 この物語に出会えたことに、最大級の感謝を。


 ありがとうございました。











(応援コメントでは作者様が、きっと素晴らしいあとがきをくださるはずなので、とっても楽しみだね☆)

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