そして僕らも自殺する。 ささやか様
仕事柄、自殺ってとても身近なものなんですよね。
不謹慎なことに、非常にタイムリー。
そして僕らも自殺する。 ささやか様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884234590
人口を維持するため、十八歳未満は恋人の存在を義務づけられます。
自殺者があまりにも多くて、家族という機能は果たせないので、父親や母親などの、家族の役割を担う者が派遣されます。
そこら中に、自殺者の死体が転がっています。
それはもう、鳩の死骸よりも、よほど身近な存在として。
ディストピア物といえば、私が真っ先に思いつくのは、新世界より、ですね。あれは別格に面白かった。
まああちらでは争いに末に秘匿された、管理社会のものですが。
こちらの作品では、あっけないほど人が死にます。その多くが自殺という方法で。
どうして世界がそうなったかと完全に言い切る説明はなかったように思いますが、人工培養による、人間の精製がより簡単になったことが考えられるでしょう。
きちんと人と人が愛し合ってセックスをして、希望のために、生物のそれはもう決められた営みのための命打たものが、人工的に、あっさりと作りだせちゃったらどうなるか。
悪貨は良貨を駆逐するというのは経済用語ですが、まあ人工的に作られた人類は自殺率が高く、自殺が普遍的な価値として浸透してしまったことと、命が簡単なものになったことで、命の価値が下がってしまったのでしょうね。
お金が増えすぎると、インフレが起こって貨幣の価値が暴落するように。
自殺する習性を持った動物は確かにいます。レミングだったかな。
しかし動物は種のバランスを保つという意味合いでしょうが、人間は違うでしょう。
個の価値を、自分自身の価値を感じられなくなったから自殺するのでしょう。
生き物としての存在理由が希薄で、それはもう命が吹けば飛ぶほど軽い。
まあ世界の強風が、命を吹き飛ばしてしまうだけなのかもしれないですけど。
死ぬことが題材であるならば、それでも生きていくことがテーマにならざるを得ない。
この世界観の中では、兄はとても幸せな部類なのでしょう。
妹も、ついうっかりで死んでしまいそうな世界で、絶望しながら生きている。
二人が願ったことは全然違うことではあるので、全くハッピーな終わり方とは思えない。
でもこれだけの舞台設定が揃っているので、もうあの終わり方でしかないですね。
生きることが美しいなんて思わない。
死ぬことが正しいとも思わない。
どんな世界であっても、生きるためには、シンプルな理由で構わない。
ただそれだけのことです。
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