野に咲く花ほど美しい

カゲトモ

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「あははははは」

 楽しそうな声が響いた。めったにバーでは聞かないタイプの笑い声だ。その声の主は一人のご婦人で名前をマリコさんという。

「想太君は相変わらず面白いね」

「とんでもない」

 マリコさんは月に一回程度顔を出してくれる常連さんで、修行先のバーからの付き合いになる。バーが閉店し俺が独立すると伝えると、「それじゃあ想太君を追いかけるね」と言ってくれて本当に通ってくれている。そう言って追いかけて来てくれるお客さんが意外にも多くて、マスターには感謝しかない。

「マリコさんが楽しそうで何よりです」

「こうやって飲みに来るのが月一の楽しみだからねえ」

 そう言ってマリコさんはにっこりと微笑んだ。曇りのない澄んだ瞳で。

 家庭と子育て、それから仕事とハードな日々を過ごしているマリコさん。彼女の癒しの場になればと、いつも思う。こうして選んで来てもらっているし、何か返せたらなと。

「次はなんかおすすめの奴にしてもらおうかな」

「おすすめですか?」

「うん! 想太君のおすすめ」

 マリコさんが言うにはもう結構な量を飲んできているはず。顔には出ないザルタイプだから言われないと分からないけど。ママ友との飲み会だから早い時間に集まって早い時間に解散したみたいだけど・・・

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