第17話 落胆する

施設の方の面談は具体的にいつかわからないだけにやや不安にかられる。

基本的に認知症対応ではないので、何とかおとなしくしとってくれと、祈るのみでした。

そして、数日が過ぎた頃、ケアーマネージャーさんから、電話が入りました。

内容は、施設からお断りの連絡がきたとのことでした。

面談の時は、ケアーマネージャーさんも立ち会ったそうで、その時「お母さんちょっと調子悪くて、色々担当の方に言うたりもあつたんですが」と前ふりをし、先方は、貧血や、腎臓悪い点も気にして、特に輸血したことに対して、「そういう治療は対応できない」と言うことなど総合的に判断し、「お断りする」ということやったとケアーマネージャーさんは説明してくれましたが、「認知症がネックになったんでしょ」と問うと、決してそれだけじゃないというが、でも最初に、その話が出る言うことは、そうなんやろと思いつつ、とりあえずわかりましたと言って電話を切りました。

妻にこの事を伝えると、妻も相当落胆しました。

二人とも、ちょっとすぐに次探そうという気力が湧きませんでした。

やはり、次当たっても、また断られる可能性が高いからです。

ちょっと時間をおいて、じっくり考えることにしました。


一方おかんはと言うと、もう車イスながら、自由きままに動き回るようになっております。

とにかく顔をみると、饅頭食いたいという、食物系とお金置いて行け、そしてもう一つ、もう帰るねのどれかです。

お金の時は、すぐにその場を離れるようにしています。

また、帰るという時は、キレイに荷物を片付け、カバンに入れて本当に帰る準備をしています。

妻もその度に、洗った着替えと、洗濯ものを区別して元に戻すという手間が増えます。

またある時など、こんな事を言いました。

さむいと言うので、車イスに乗ったときのひざ掛けを買って渡していました。

結構それが気に入っていました。

そのひざ掛けを掛けながら「これなあ姉ちゃん買うてきてくれてん」と嬉しそうに言うのです。

この時のおかんの言う姉ちゃんとは、長女のことで、先にも述べたように、この年の一昨年に亡くなっております。

妻のことを姉とかぶっているのか、妄想を見ているのか、死んだことわすれているのか不明ですが、ちょっときみが悪い気持ちもしたりしました。


正直、このまま病院に置いてくれれば一番手間要らずでいいのにと言う気持ちでした。

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