第24話 ルールとかいうあってないようなもの


 ナトとシーズの戦いはひとまず休戦となった。戦いのルールを設定した後、再戦する流れとなった。

 二人の仲介役となったビロウはお互いの意見を聞き、二人が納得できるルールを設けた。


 冒険者ギルドの館で、ナトとシーズは再び対面し、その間にビロウが立つ。

「さて、お二人はん。ルールはこんな感じに決まったけどんやけど、これでええかな」

「ああ」

「うん」

 シーズとナトはお互い返事する。

「わかっとるかもしれへんけど、確認のためにもう一度言うで」

 二人はコクリと頷く。

「一つ目はどちらかが負けを認めたらそれで終わり。わかりやすい勝敗の付け方やな」

「僕はそんなカッコ悪い負け方をする気ないけどね。これはナト君のためのちょっとした逃げ道みたいなもんさ」

 シーズはそういってほくそ笑んだ。

「二つ目はセコンドが負けを認めたらそこで大人しく負けを認める。戦いに出るお二人はんがセコンドに直接攻撃を加えるのは反則やで。それと、セコンド同士が直接攻撃するのもアウト、第三者がセコンドに攻撃するのもアウトや」

「セコンドが僕らに対する補助スキル、回復アイテムの使用は?」

「無論、禁止や」

「セコンドが他のヤツに補助回復をかけるのは?」

「そないなもんまで面倒見てられるか」

「ふーん、ありということだね」

 シーズはわずかに表情を動かし、マングローブと目配せした。

「ボクのセコンドは妹のラッカにしてもらいます」

「シーズはん?」

「マングローブにしてもらうよ」

「二人ともセコンドはこれでええんやな、セコンドの変更とかはもうできへんよ」

 ビロウはそれぞれの視線を確認する。二人はカオを縦に振った。

「さて、三つ目はこの戦いで起きたことは将来に渡って引きずらない。つまり、ここで起きたことはどんなことがあっても文句言わないことや」

「相手が物言わぬボロクズになってもか?」

「それはオーケーやで、シーズはん。でも、そんなことにはならへんように、セコンドにも戦いをやめさせる機会を設けとる。もし負けを認めた時に、攻撃なんかやった日には……」

「わかっているわかっている。僕の経歴に傷つけるマネはしない」

「そや。商人ネットワークはなめんことや」

「闇討ちとかもゼッタイダメだから」

「ナトはん、ジブンが一番言うべきセリフちゃうで」

 

 ルールの確認を終え、二人は戦いの準備のために、セコンドの元へと向かう。

 シーズはマングローブのいるテーブルに着くと、彼女は不満そうな声を上げた。

「アナタがこういうカタチでケンカするなんて珍しい」

「不満か? マングローブ」

 マングローブは首を左右に振る。

「いえ、アナタならもっとふさわしい相手と戦うはずだと思って」

「僕に戦いはするな、と、命令するつもりか?」

「違う。ケンカするなら格上の相手にするのが普通。格下の相手なんかほっとけばいいのに」

「ケンカに格も何もない。ケンカなんか売られてきたら買うのが普通。それが強者たるモノの宿命だろう?」

「ケンカを売ってきたのはアナタだと思うけど」

「何か言ったか?」

「別に」

 マングローブは素知らぬふりで自分の気持ちを隠した。

「まあ、セコンドを頼んだのはすまないと思っている」

「それはいいわ。そういうのがワタシの役だとわかってるつもりだから」

「なら、わかっているだろうな」

 マングローブは護身用の短剣をテーブルの上に出す。

「ホントにいいの?」

「ああ」

「ルールを破ることになるわよ」

「だいじょうぶだいじょうぶ、問題はない。言葉どおりにやればルールは守ったことになる」

「それでも……、なんか気が引けるわ」

「ルールなんてさ、ギリギリ攻めるもんだから。そりゃ抵触したらアウト。でも、その上で歩くのはオーケーオーケー」

「危険な橋なんて渡りたくない」

「僕は渡りたいよ。そしてその橋を壊しておきたい。次に渡る人間が、二度とその橋を通れないようにね」


 シーズとマングローブが話を交わす一方、ナトもラッカと話をしていた。

「ラッカ、ゴメン。こういうことに付き合わせて」

「別にいい。――というか、半分諦めてる。お兄ちゃんはこういうことするんヒトだってわかっているから」

「ハハハ、面目ない」

「それよりお兄ちゃん、勝ち目ある?」

「一応、あると言えばある」

 ナトはマングローブを見る。

「ボクが気がかりなのはあの踊りコ。あのヒトが何を仕掛けるかよくわからない」

「踊りコなんだから踊ることしかできないんじゃないの?」

「うん、そうなんだけど、能力向上バフスキルを掛けてきただろう? シーズに。それで、能力が飛躍的に上がったからちょっと驚いた」

「でも、セコンドにつくじゃない? これで好き勝手に補助スキルとか使ってこないよ」

「そうだけど。うーん」

 ナトは考える。考えて、ちょっとしたアイデアが生まれた。

「ラッカ。踊りを封じることはできるか?」

「でも、それって攻撃になるんじゃないの?」

「いや、相手が約束を破ったときに、即時発動できるそういう封印魔法」

「あのね、そんな都合のいい魔法は――」

「――あるわけないよな」

「あるよ」

「あるの!!」

「うん。封印魔法には相手の能力や攻撃を封じる魔法がある。その封じ方には二つあって、一つ目はその能力自体を封じる封刻ふうこく魔法、もう一つはその能力は発動した時に、ペナルティを発動させる罰即ばっそく魔法なの。シーズさんが使っている宝神具の異能力“約束”も、この魔法の延長線上にあると思う」

「へぇ」

「罰即魔法は簡単で、相手の身体に“印”を結ばせ、“封じるルールとペナルティを伝えて”から、後はわたしが“詠唱”をするだけ」

「だからその簡単はボクにとって、わからないの!」

「ああ、ゴメンゴメン。お兄ちゃん、魔法苦手だったね」

「……とかく、罰即魔法は二段階の準備をしてから、詠唱すればいいんだな」

「でも、封じるルールとペナルティは相手の“同意”が必要。これを無視されたら元も子もない」

「けっこう条件厳しいな」

「マングローブさんに予め罰即魔法を仕掛ければ、マングローブさんが約束を破ったその次の瞬間に魔法が発動できる」

「なるほどなるほど」

「けれど」

「……けれど?」

「罰則魔法を予め仕掛けるのはルール上、攻撃として認定される可能性がある。つまり、魔法を使ったわたしの方が先にルールを破ったと思われる可能性がある」

「ああ、それはちょっとまずいかもしれないな」

 ナトは下向き、思考をめぐらせる。

「……下準備はオーケーかな?」

「下準備?」

「“印”と“同意”を済ませてから、“詠唱”は後にする。これなら罰則魔法はセーフ――」

「それ遅くない? ルール破ってから罰則魔法が発動するから、一度目のルールは破られてからになるよ」

「ルールは一度破ると二度三度破る。だから、二度三度を封じれば、それでいいと思う」

「お兄ちゃんは、あの二人がルールを守らないと思っているの?」

「残念だけど、ボクはそう思う。シーズはルールを破ることを考えた上で、ルールを結んだはずだ。だからボクは、いつどんなカタチでそれを破るのかを思案している」

 ラッカは視線を下にする。

「……ルールを思いつかなかったほうが良かった?」

「いや、ルールがあれば、戦いの目処がつく。実際に、これからどんな戦いをすればいいか、だいたいの目処はついた」

「ホント?」

「ああ」

「わたし、足手まといじゃないよね!」

「立派にパーティーの一員やっているよ、ラッカ」

 

 二組の会話が途切れ途切れになっていく。

「話は終わったか?」

 ビロウはそう呼びかけると、二組は彼の元へと向かった。

「後残りがないように全力でやってくれよ、お二人はん」

「その前に、この宝神具に“約束”をしてもらおうか、ナト君」

 シーズは宝神具バルムンクをかざす。

「それはないんちゃうかな、シーズはん」

「残念だけど、僕はみんなのこと信じていないんだよ。約束を破ったら即、この剣で斬られてもらうよ」

「そんなことしたら兄さんが一番得ちゃうんか」

「いや、僕だって、この剣を通してルールを破ったら、この剣から何されるかわかったものじゃない。ひょっとして死ぬより苦しい拷問が待っているかもしれない」

「だからといって、宝神具に約束させるなんてズルいやろ。それだけで兄さんの力になるんやから」

「お互い裏切らなければそれでいい」

「あのな……」

「ボクはそれでいいよ」

「ノってきたね、ナト君。僕はそういうキミの素直な所は好きだよ」

「でも、信用はしてくれないんですね」

「ああ、残念だけどね」

 ナトはシーズのそばに近寄り、宝神具バルムンクのつばに手を置く。

「約束だ。どちらかが負けを認めたらそれで終わり」

「ああ、約束する」

 宝神具の宝玉が静かに光った。


「次はセコンドが負けを認めたらそこで大人しく負けを認めるだったね」

「ボク達二人がセコンドに直接攻撃を加えるのは反則。セコンド同士の直接攻撃はアウト、第三者がセコンドに攻撃するのもダメ。ついでに補助回復も」

「よく覚えているもんだね。えらいえらい」

「この約束はセコンドにもして欲しい」

「ほぅ、妹が信じられないと」

「ボクも怒るときはあるよ」

「冗談だよ。ハハハ、冗談だ」

「……マングローブさんが何をやってくるかわからない。だから、宝神具に約束をして欲しいんだ」

「ワタシはただの踊りコよ」

 マングローブはナトの目を見る。ナトはカノジョの目を見てしまう。

「ほら、こうやって、相手と一緒に踊るぐらいしかできないわ」

 マングローブが手を波打つように動かすと、ナトも同じような動きをした。

「……なんでお兄ちゃん、踊っているの?」

「いや、身体が勝手に……」

「マングローブ遊ぶな」

 シーズに注意されたマングローブは手をパンパンと叩くと、ナトの身体は自由になった。

「ね。ワタシはこういう遊びみたいなことしかできないだから安心してね」

 マングローブは茶目っ気を出して笑う。ナトは軽くハハハと愛想笑いするが、――これがボクの感じていたモノだったか、と、自分のカンに感謝していた。

「マングローブさん」

 ラッカは静かに声を上げた。

「何?」

「お願いがあります」

「お願い?」

「この冒険者ギルドの館にいる間、踊らないことを約束してください」

「踊らない踊りコって……、それって、ワタシがエロい格好した女のコになるだけよ」

「……ワイはそれでええけど」

「商人、欲望を口に出すな」

 シーズはビロウの小さなつぶやきに、即座に反応した。

「でも……」

 マングローブがナトへの視線を外し、シーズを見た。彼の意見が欲しいみたいだ。

「いいじゃないか」

「シーズ!」

「でも、これは宝神具でお願いするようなものじゃない。二人の間で交わす小さな約束にでもしてくれ」

 シーズはニヤッとマングローブの方を見て笑う。マングローブは宝神具の“約束”の対象にならないとわかるとホッとした。

「それでいいか? 妹君」

「はい」

「じゃあ、この剣に約束――」

「その前に、おなじないをします」

「やれやれ、妹君もナト君と似てマイペースだ」


 ラッカはマングローブの真向かいに行くと、彼女の手を握った。

「小指を出せばいいの?」

「そのまま楽にしてください」

 マングローブは言われるがまま、ラッカの好きなようにさせる。

「まったく、何してるんだか……」

「怪しんでいるんだよ。ここは勝手にさせておこうよ」

「信頼がないのはアナタのせいなんだけどね」

 マングローブはシーズと小声で会話をする。その間、ラッカはマングローブの右手、左手に横長いXを描く。これで“印”は結ばれた。

 マングローブは自分の両手についた“印”をじっと見つめる。

「それにしても、これ見たことない模様ね」

「踊らないでくださいね、絶対」

「もし、踊ったら?」

「この印が燃えて火傷します。もっと踊ると炎上します」

「まあ、それはこわい」

 マングローブは女のコの冗談だと思い、軽めに笑った。

「小さな約束ですよ」

「約束ね、はいはい」

 マングローブはラッカとの小さな約束を了承した。これで“同意”がすんだ。

 

 シーズ、ナトと続いて、マングローブとラッカも宝神具バルムンクに“約束”をした。

「三つ目はこの戦いで起きたことは将来に渡って引きずらないだったな」

「そや! 何が起きても、どっちが勝ったつーことは門外不出や!」

「ふーんなら、この館にいるみんなにもして約束して欲しいな」

「何言うてんの? ジブン」

「だってさ、かわいそうじゃないか? 僕に歯向かったからナト君が冒険者になれなくなったら……」

「いや、そういうことちゃうで。兄さんが負けたら、何するかわからないからやで」

「僕がそんなことする人間に見える?」

「……見えない(見える)で」

「見える、と、心の声が聞こえたのはなぜかな?」

「ハハハ」

「笑ってごまかすな、商人」

「でも、みんなと約束してたら時間がかかるで」

「それは大丈夫。冒険者ギルドの館の代表として、ここのオーナーと約束すればそれでいい」

「――てなこと言ってますが、オーナーはんやってくれますか?」

「えっ、私? 私?」

 思わぬカタチで飛び火したオーナーはドタバタと慌て出す。

「そや。ワイとしても、できればした方がいいと思うんやけど」

「もし破ったら」

「斬られる。破ったヤツは容赦なく斬られるで」

「イヤよ。私、簡単にしゃべりそうだもん」

「お願いしますで、オーナーはん。このしゃべりたがりのワイでさえ、約束守るつもりなんやから」

「うーん」

「皆もこの二人に邪険にしないで欲しいんや。トリッキィーな冒険家が全力で宝神具使いとケンカするんや。こないなケンカは始めてやろ、ワイも始めて見るわ。おそらく、このケンカは勉強になるはずやし、カネにもなる。これを独占的に見ることができるんや。絶対儲けもんやとワイは思うんや」

 ビロウの話を耳にした冒険者達はこぞって話し合う。

「変な戦いをするヤツだが、アイデアはすごいな」

「宝神具使いを本気にさせたのだから力はある」

「すぐ勝負がつくと思っていたが、案外粘りもあるよな」

「こういう戦いはマネしたいとは思わないが、役立つ所は多々ある」

「何よりあのイキリ野郎を倒してくれるかもしれない。そういうのが見られるかもしれないだけでもオレは楽しだみ」

 ビロウの考えに賛成と言う意見が目立つ。

「さて、オーナーはん。皆、ワイの意見に乗ってくれとる。あんさんの考えはどうや?」

「私はこの館がメチャクチャにならなければいいんだけど」

「皆はんから観衆料取ろうか?」

「負けた方が全額払うと言うのは?」

「あんさん意外とノリノリやな」

「なんか楽しくなってきたから!」

 オーナーはうさぎのようにぴょんぴょんと跳ね、宝神具バルムンクと約束を交わした。


「ナトはん、シーズはん、これで下地はできたで。後はしばきあいでもなんでもやってくれるとええで」

 ビロウはそう言って二人のそばから去ろうとする。

「商人、恩にきる。得意先にしてもいいぞ」

「ハハハ、そうでっか」

 ビロウは軽く笑いながら、ナトのそばを通り過ぎようとする、

「ありがとうございます、ビロウさん」

 ビロウは立ち止まって返事する。

「ニイチャンは無理せんとやれるとこまでやるええで」

「ええ、でも、ボクは神の声の秘密を探りますよ」

「そんなんどうでもいいと思うんやけどな」

「でも、気になるんです」

「気になる?」

「ええ」

 ナトはビロウに耳打ちする。

「まあそやな。そんなことないわな」

「でしょう? 神の声、いえ、もっとそれよりもおぞましい何かが彼の中に居座っている可能性があります」

「ニイチャンのカンはよく当たる、――いい意味でも悪い意味でも」

「今回はハズれて欲しいですよ、今回は」

「ワイもそう思うわ」


 ナトから離れたビロウは近くにあった椅子に座った。はぁーと深いため息をつき、身体をおもいっきり椅子に預けた。

「ご苦労じゃ、商人」

 まほうつかいのアコウがねぎらいを掛ける。

「疲れたわ、もう二度とこんなアホなマネはせんで」

「でも、うまくやってくれたな商人。踊りコの状態向上バフスキルと回復アイテムの封じるために、あのルールを設けたのはさすがじゃな」

「何もしなければ話やけどな。しっかし、武器の使用禁止は乗ってくれへんかったわ」

「それはナトにも言えることじゃろう。この館にあるものすべてが彼にとって武器なのじゃからな」

「そう考えるとワイはうまいことやったと思えるわ」

「そうじゃ、自分に自信を持つといい」

「そやな」

 ビロウはじっと椅子に座ってから、ふと、アコウに話しかけた。

「大魔導師はん。確か冒険者協会の関係者やったよな」

「昔の話じゃよ」

「神の声が聞こえるこどもを集めていたか?」

「神の声?」

「傭兵二人を治癒していたから聞こえなかったかもしれへんけど、シーズはそう言ったんや、自分には神の声が聞こえると」

「聞いたことあるのぅ。しかし、ワシが噂に聞いたのは、その声は神じゃなかった気がするが」

「神じゃない? じゃあ、何の声や? 何の声が聞こえて、あの男は、英雄一歩手前まで登りつめることができたんや?」

 アコウは何かを思い出そうとするが――、

「……忘れた」

 ――と言い捨てた。

「忘れた?」

「そうじゃ、忘れたわ」

「あのな大魔導師はん! ナトはんはな、神の声の秘密を知るために、宝神具使いと戦うんやで! 何か知っていることぐらい伝えてもええやろ!」

「知らん知らん、そんなのは」

「だから! 大魔導師はん!」

 ビロウは声を荒げ、アコウを問い詰めようとする。しかし、アコウは――、

「……忘れたことにしてくれないか?」

 ――と、返事した。

 はぁはぁと息するビロウは深呼吸し、冷静さを取り戻す。

「記憶忘れかなんかは知らんが、もし、もしホントに知っていることがあるんなら、教えた方がええで」

「商人がワシに説教するのか?」

「何かを伝えることぐらい損得勘定なしでできるやろ、大魔導師はん。何か伝えられんことで損することがあるんなら、傷つく前に伝えてやれや」

 アコウが何を隠しているか知らない。しかし、そこにはナトが求める答えがあると、ビロウはにらんでいた。

 

 ナトとシーズの戦いは再び始まる。

 ナトは視線を上下左右に動かし、武器となるモノを探っていく。

 一方、シーズは宝神具の大剣バルムンクを手にし、滑稽こっけいなまでに動くナトの目を見て、カオがゆるむ。

「ルールが決まったというのにどうして全力で来ないのかな? キミは」

「そういうシーズさんこそ、こっちに来ないなんてちょっとふしぎ」

「僕にもこういうときがあるよ」

 ナトはシーズが何らかの策を打ったと考えていた。

 しかし、その策は一体何であるか見破ることができない。

 ――彼は思いつきで動くタイプだ。その思いつきさえわかれば、なんとかなる。

 ナトの思考はその一点、シーズの策が何かを見破ることにした。

 そのかたわら、シーズは何もしてこないナトに嫌気をさしてきた。

「わかったよ」

 シーズは仕方がないと言わんばかりに、宝神具バルムンクを床に刺した。

「素手で戦おうか、ナト君」

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