Trick ? Treat
霜月二十三
Trick or Treat?
ここはモンス島の聖女邸の前。白を基調としたお屋敷に、手入れの行き届いた庭、そして部外者を阻む鉄の門。
今日はハロウィンということで聖女や聖女親衛隊の隊員らからお菓子をたかる、
もとい、もらうべく、思い思いの仮装をした子供たちやその保護者、そしてイベントごとが大好きなティーンたちが鉄の門をくぐり、聖女邸の扉が開くのを待っていた。
その集まりの
彼は、大多数のティーンや保護者たちに身長で負けるほど小柄な体躯で、初見で彼の実年齢を正確に当てられる者がいない程の童顔ではあるが、立派な成人男性である。
彼の仮装は水たばこを吹かすイモムシ、といっても持っている水たばこに火はついていない。周りへの気遣いとか仮装の小道具でしかないことのアピールゆえである。
しばらくすると、聖女邸の扉が二人の聖女親衛隊員の手で開かれ、長袖の純白のワンピースに身を包んだ聖女マナと、そばに立つ二人の聖女親衛隊員の手で子供たちにお菓子が配られる。
子供たちがTrick or Treatとお決まりのセリフを言った後、お菓子の入ったかごを手渡される。
彼の前にいた十四、五歳の男女五人組がお菓子を受け取った後、ついに彼の番が来た。
「Trick or Treat?」
「あ~、申し訳ございません。さきほどお菓子がなくなってしまいまして……」
聖女親衛隊員の発言に、え、と彼が呟いた後、彼はこう続けた。
「お菓子くれないの……?」
聖女親衛隊員が謝罪の言葉を述べながら頭をさげる。
「お菓子くれないなら……わかってるよね?」
彼がそう言った後、水たばこの口をつける部分をくわえ、中の水をぶくぶくさせるように吸い込む。そして紫煙を聖女親衛隊員に吹きかける。すると聖女親衛隊員が苦しげに笑い出した。
どうして火のついていない水たばこでこんな芸当ができるのか。魔法である。
彼の得意な毒魔法で笑いが止まらなくなる毒の煙を生成し、親衛隊員に吹きかけたのだ。
「五分もすれば笑いが止まるから。じゃあね~」
ちなみに魔法を使う上でこれといった小道具は不要で、せいぜい術者の遊び心などによる、ちょっとした演出に使う程度である。
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