第7話 三歳児

自己紹介をした。


「本日からお世話になります。

○○由香と申します。性格は適当で楽天的で負けず嫌いです。

趣味はイラスト、スケボー、一人旅です。

宜しくお願い致します。」


園長先生が固まった。


やばい、三歳児だった。

そもそもイラストでなくお絵かきと言うべきか。

一人旅って三歳児でアンタ。


「じゃあ由香ちゃんはこの席ね。」


園長先生は去り、担当の保育士が来た。


「由香ちゃん、私まなみ。宜しくね。」


思い返せば、生まれ変わる前のこの時代は

一人でポツンとして、自己紹介出来なくて

隅っこでおままごとしてたら取り上げられたり。


そして顔も忘れない苛めっ子登場。


「由香ちゃん宜しく。」


会いたかったよ、アンタに。

あの頃散々人の髪の毛を引きずり回したり

踏みつぶしたりしたよね。


保育士見てない隙に殴りかかったり。


んで周りの奴等はビビッて全員、私を

ハブいたよなぁ。


お絵かきと折り紙の時間が始まった。


保育士にはお父さんとお母さんの絵を

描いてくださいね。

と言われて、道具箱のクレヨンとクーピーを

どけて保育士の机にある鉛筆を勝手に取り出した。


思い出しながら肖像画を描いてゆく。

保育士はそれを見て唖然とする。


「由香ちゃんは絵が本当に上手。

先生も描けない。絵の学校行くべきじゃないかしらねぇ。」


先生が関心している背後に気配を感じる。

そう、あの苛めっ子。

まなみだ。


先生が教室の前に立ち、


「では皆さん、これからお砂場で遊びましょう!」


と告げて、砂場へ向かった。


思い出す記憶。

たしか私が砂場で山を作ったらまなみに

踏みつぶされたな。

その後他の奴等にも潰されて大泣きした記憶。


敢えて挑発しよう。

私はあの頃のように山を作り出した。

背後に気配を感じる。


「おい!邪魔なんだよ!」


そう、このまなみは親が口悪い為に

三歳児にして暴言が得意だった。

そして背も体格も私より二回りデカい。

あの頃は泣いて山を踏みつぶされた。

脅えて帰宅後には憂鬱状態と恐怖だらけだった。


楽しみにしてたやつが来たな。

私は言い返した。


「うっせんだよ、クソガキが!

てめえ少しデカいだけでえばってんじゃねぇよ。

殴りたきゃ殴ってみろコルァ!」


私はまなみの胸倉を掴んだ。

三歳児だが二歳児の保育園に入る前に鍛えた

身体は結構見事なもんだ。


まなみは動揺した。

そして泣き始めた。


「ううぁ、お前、、、

ごめんなさぁい。。。」


こいつは強い奴には手を出さないが

また弱いターゲットを発見すると虐める

厄介なガキだ。

暴力は振るわないが掴んだ腕の力と

言葉で脅してやる。


「お前、偉そうだけど、もう私には

手出せねーからと言って他の弱い奴

虐めたらフルボッコにすんからな。

耳クソほじってよーく覚えとけよ。」


まなみは泣きながら端っこで泥んこを

作り出した。


くわぁーーーー!!

すっきり。

過去に戻れるってさいっこーだよ。


でもこの頃の私はまだ自分を理解していなかった。

自分は29で自殺をしている。

そして過去に戻る事には成功したが

自殺をしてしまった事の重要さに。

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