Middle 4-2 悪魔の脅威

 操られた“ディアボロス”と対峙する4人。


「響真クンと2人で牽制します。泉チャン、ネストの準備を。」


 動けない速人を背後に庇い、指示を飛ばす炭井。

 手ぶらに見えた右手には、いつの間にか大きめの二連装拳銃が握られていた。

 銃床に左手を添えてえて引き金を2度引く。4発の弾丸が“ディアボロス”の胴体を狙った。


「…続きます。」


 放たれた弾丸を追うように、響真がコンバットナイフを構えて走り出す。

 3歩駆けるうちに、その姿が陽炎のように揺らめき、消えた。


「……。」


 半身に構えた“ディアボロス”の前腕が隆起し、飛来する弾丸を受け止める。

 そのまま真後ろに向きなおり、右手を振るう。

 透明化し、背後から迫っていた響真のナイフはその右腕に浅く刺さり、止まった。


隠密攻撃これを止めるのかよ…!)


 舌打ちしつつ“ディアボロス”の胴体を蹴りつけ、間合いをとり直す。

 炭井の弾は2発が肩を抉っていたが、痛手とは程遠い。


「……。」


 《電光石火》の一撃を放った反動で響真が動けない隙に、“ディアボロス”が動き出した。

 右腕が鋭く、より攻撃的な形態フォルムの《破壊の爪》と化す。

 おおきな鉤爪を振りかぶり、響真の頭上を跳び越えた先。そこには速人を守ってひと固まりになっている3人。


「速人クン!」

「ダメ…!」


 跳びかかってきた“ディアボロス”が、炭井と泉の頭を鷲掴みにして地面に叩き伏せる。

 頭を砕かれて動かなくなった2人を一瞥すると、腰を抜かして後ずさる速人に歩み寄ってきた。


「嫌だ…助け…。」


 無言、無表情のまま、速人の腕を踏み潰すように蹴りつけ、へし折る。


「ぃッ…アアアアア゛ア゛ア゛ア゛ッ…!!」


 速人の絶叫は、鉤爪に喉元を突かれて途絶えた。

 鉤爪を染める返り血が、“ディアボロス”の傷を見る間に再生させてゆく。


「ア゛…がはっ…。」

『あら酷い…ちゃんと《リザレクト》できてる?

 …よしよし、3人とも生きてるわね。』


「速人…クン。」


 仰向けになって喘ぐ速人。

 その時《リザレクト》で致命傷を再生した炭井と泉が見つめる前で異変が起こる。


(嫌、だ…。)


 黒い炎が速人の心臓に灯り、右脚、左腕に広がっていく。


(痛い、怖い、死にたくない、なんで、どうしてこんな…)


 炎の揺らぎは左手に確かな輪郭を成す。それは禍々しいであった。


(来る、ナ…)


 マリオネットのような不自然な動きで、速人が立ち上がる。


WRAAAAAAAAウラァァァァァ!」


 天を仰ぎ、吠える速人。

 その身体を覆っていた黒炎が浮かび上がり、人型の姿をとる。腹部と右腕、左の腿がごっそり欠けた、不完全なシルエット。左腕はを思わせる鉤爪だった。


『そう!これ!これよ…!なんて珍しい力、久しぶりにじっくり研究したいわ…。』


 興奮した声がスピーカーから響く中、“ディアボロス”の目がわずかに光を取り戻す。

 漆黒の炎に焼かれ、その顔は歪んでいる。


「この姿ハ……私の爪!

 そうイう、事か…小僧!」


 炎のように揺らめくシルエットは泳ぐように速人の側から飛び出し、“ディアボロス”に襲いかかった。



 >SCENE WILL CONTINUE…>

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