Middle 3 白昼の会議

 ホビーショップ「マイスター」…モデルガンを中心にプラモデル、フィギュア、食玩まで揃えている、各種オタク御用達の店。

 そして、UGN星川第二支部の隠れ蓑。日常を護る超人たちの前線基地そのものである。

 速人と泉が午後の授業を受けている頃、支部では炭井と響真の調査会議が行われていた。


「“シルキィウェブ”は、“インジェクター”を名乗った女の教え子ということですが…調査を任せてよかったのですか?」

「泉チャンには辛いかもしれませんが…誰でもない泉チャン自身が事実を知りたがっています。

 情報収集はに任せるのが一番ですよ。ですよね、響真クン?」

「自分はあくまで命令に従っているまでです…。」


 やや不服そうに言い返し、響真は報告を始める。

 本題は「FHセル『人形軍団ドールズパレード』について」。1ヶ月間で響真が調べた、動向、勢力のデータが並べられる。


 『セルリーダーの“インジェクター”が『洗脳』に類する能力を以て、強力なオーヴァードを手当たり次第に支配下に置いている。』

 『“インジェクター”自身は通信越しで指示を出し、決して姿は見せない。』

 『洗脳された者を捕縛する試みも、洗脳された者の自爆、さらなる洗脳による同士討ちなどによって失敗に終わっている。』

 『“インジェクター”の正体も、洗脳を解く方法も、現時点では不明。』


「…セルの構成員には、行方不明になったUGNエージェントの姿も確認されています。

 他のFHセルにも侵攻し、構成員を洗脳していたようで、相当敵視されているようです。」

「オーヴァードでも短時間で支配下に置くとなると…かなり危険ですねぇ。」


 その上、と響真が続ける。


「自分が交戦した中で、明らかに動きの違う敵が1体いました。

 成人男性サイズの人型。腕を強化した白兵戦闘タイプ肉体強化系キュマイラと考えられます。黒マントで姿を隠しており、容貌は不明です。」

「シンプルなパワータイプ…同系統のエージェントは少なくないでしょうが…。」


 何か引っかかるのか、モデルガンのグリップを弄りながら思案する炭井。

 そこに携帯端末が震え、メッセージの着信を伝える。

 内容を一瞥した炭井は微かに笑みを浮かべると、おもむろに立ち上がった。


「そのの心当たりを思い出しました。一緒に来てくれますか?」


 ―――――

「速人クンが『眼つきの鋭い、白いスーツの男性』が“インジェクター”と一緒にいたのを覚えていたそうでして。

 容姿が一致しますし、このタイミング。十中八九も関わっているでしょう。」


 炭井がディスプレイに示したのは、ある人物のプロフィールだった。


 『“ディアボロス”春日恭二』

 UGNとFHの誰もが知る名。

 獣化した肉体を武器に戦う古強者ふるつわもの

 「悪魔ディアブロ」の名を冠し、不死身とさえうたわれるFHエージェントの姿を2週間前、星川市東区の監視網が捉えていたのだ。


「…“ディアボロス”が“インジェクター”に協力していると?」

「どうでしょうねぇ…。プライドの高い彼が大人しく従っているなら、よほどの事情があるか、あるいは…。」


 既に洗脳されて、手駒にされている。

 チルドレンとして“ディアボロス”の脅威を聞かされていた響真にも、それがいかに恐ろしいことか察せられた。


「いずれにしろ、彼との交戦も覚悟する必要がありそうです。

 速人クンと泉チャンが帰ってきてから、改めて作戦会議といきますか~。」


 大きく伸びをして、鼻唄混じりに出ていく炭井と、それを呆れ気味に見送る響真。



 しかしその頃既に、不死身の悪魔は確かに狙いを定め、動き出していたのだった。


 >>SCENE END



 “瞬く間に背後へフラッシュ・バック”|一条響真

 侵蝕率:46%

 ロイス取得…「敵」“インジェクター”(執着/●憎悪)


 “バレルマイスター”炭井六郎

 侵蝕率:55%

 固定ロイス…「上司」霧谷雄吾(○誠意/無関心)


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