悲しみのマリオネット殺人事件

ごま忍

第1話本日は事件なり

「あーメロン食いてぇー」

花上四太郎(はなうえ よんたろう)は刑事である。

コロ助がコロッケを大好きなように、ハクション大魔王がハンバーグを止められないように一日に一回はこのフレーズを口にしてしまうのだ。

かといって、花上にはメロンを買うほどの余裕はなく、結局言ってるだけで実際は中々食べれていない現状である。

「はぁ?」

食堂に集められた面々は一同に首をかしげた。

さぁ、これから今回の事件の真相を暴くぞと豪語した次のフレーズがそれであれば、そりゃそういうリアクションも取りたくもなる。

周囲の反応はよそに花上は言葉を続けた。

「被害者のマリオさんは皆さんも知ってる有名人でしたよね?」

「まぁ知る人は限られるかもしらないけど・・.サッカー選手だろ?」

容疑者の一人、安西ひろしが受け答える。

「私はサッカーファンで彼のファンでもありましたので誠に残念です。」

花上は大のサッカーファンでポテトチップのおまけのカードを大量に集めているほどである。

そうそれはコロ助がコロッケを大好きなようにハクション大魔王がハンバーグを止められないように・・・ 。


「あっ、あの~私がやりました」

容疑者の一人、堂本光二がか細い声で呟いた

「あ~、だからマリオのシュートはセンタリングからのボレーだって」

花上は安西とサッカー談義に花を咲かせていて、その言葉は書き消された。

コロ助がコロッケを大好きなように、ハクション大魔王がハンバーグを止められないように。誰も二人を止められなかった。


三時間後‥‥


「いや~、充実した一日だった」

満足した顔の花上と安西はお互いの部屋へ戻っていた。事件のことなどすっかり忘れて‥‥。


二時間後‥‥


花上はふと目を覚まして廊下を歩いていた。ホテルの部屋にはトイレが無く協同トイレがある為だ。

何気に廊下を歩いて行くと、突当たりの部屋が開いていて明かりが漏れている。

「こんな時間に‥‥」

花上は部屋の前を通り過ぎようとした時、異様な空気を感じた。

隙間から見えた部屋にはどす黒い血が流れていたのだ。花上は部屋へ入りベッドに倒れている男を見た。

「マリオさん‥‥、ヤバイ、忘れてた!」

先程、安西と話していたサッカー選手のマリオが倒れていた。


何かの歯車が動き出そうとしている。


コロ助がコロッケを大好きなように、ハクション大魔王がハンバーグを止められないように・・・。


花上は急いで一同を再び部屋へ集めるのだった。

「ふむ、被害者のマリオ氏は昨晩この旅館で財布を盗まれ・・・。その犯人が堂本さんだったと・・・。」

「ええ、たしかに財布は取りましたが殺してなんかいません。」

か細いながらも振り絞り堂本は話したのだが

「おい、威勢いいがな・・・、窃盗だって犯罪だぞ。」

館内に怒鳴り声が響き、堂本は一喝された。その主は典型的アメリカのおじさん、ハンバーガーのとても似合う佐藤警部補である。


「で、第一発見者が君かぁ。いいかげんにしろよ!」

溜息混じりに佐藤が話すのには訳がある。

とにかく花上と絡んだ事件には難事件が多く、佐藤にとって良い思い出など全くもってない。過去2度の事件ともタライが頭に落ちて来てるのである。


「いやー警部とは縁がありますねー。学園不思議発見事件以来でしたね!」

対して花上においては、佐藤が気のいいオッチャンに見え、わりと好きな方なのだ。

その時だ!


ガゴーン!


佐藤の頭にタライが落ちて来たのであった。

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