包丁

親だって兄弟だって殺せるのに

もちろん自分だって殺せるのに

殺すまでの時間がかかる

包丁を取り出す時さえ心臓が高鳴り

手が震えて上手く持てない

突きつけることもできないから

机や床に置いて見つめ合う

親や兄弟の肌を見ながら突き立てる妄想をし

薄い肌を切り裂く現場を想像し

己の肌も見て血が出るのを妄想している

きっと誰だって殺せるだろうけど

きっと誰だって殺せない

どこかで何かが切れないと

上手く世間をしれたから実行できないのか

何も知らなければ実行できたのか

堂々巡りの思考の中で

目の間にある使い古され錆びた包丁だけが真実だった

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