根腐れ

最初から終わっていたなんて言わせない

最初から壊れていたなんて許さない

目の前にあるものが全て

目の前でできる事が全て


生きる為に食らいつく

しがみついて離さない

放したくもない

自責はあるけれど

後悔はしない

してはいけない

したら「最初」も否定してしまう

虚構の中で生きているんだとしても

うまく騙して騙して騙して認めない


私は何も悪くない


「一回でも謝ればいいじゃない」

享楽にふけっていたと言うに

コレは何を言うのだろう

生きる為にお金を「貰って」やっていたのに

それはコレの為でもあったのに

コレから金を貰ってやる事もできない私が

とてもとても可哀想なのに

これから先もお金を貰ってやろうとしてあげたのに

「私にも言う事あるでしょ?」

ああ、なるほど。コレのモノを売ってやったのを怒っているのだろう

私には要らないものだったし。しかし、その目はなんだ

憐憫や同情や軽蔑や「可哀想」という目は!

私は最初からそうだった

私は何も最初から間違っていない

間違っていない、間違っているのは

「あなたこそ本当に一緒に来なくていいのね?」

お前の方だ

「……なんのために?」

そんなの私のお金の為に決まっているでしょう

ああ、やめなさいよ、その目。憐れみの目。

どうしようもない、というその目!

「親子は一緒にいるものでしょう」

前々から気に入らなかった。その目! 目! 目!

殴らなかったことを褒めてほしい

一生懸命、産んでやったのに

母さんの反対を拒否してまで産んでやったのに!

母さんから貰ったお金で育ててやったのに!

「私は清算して、ここで終わらすから」

せいさん? おわらす?

よく分からない言葉を漏らすコレの目が冷え切ったものに変わった

なに、これ、こわい

ああ、逃げよう。逃げよう。だめだこれは

私は悪くないし間違ってもいない、ただ生きているだけだ


生きているだけなのだから、悪くない

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