第96話
翌朝。朝の光が差してゆっくりと眼を覚ます三人。
「ソウタくん、すごく頑張ってたけど、大丈夫なの?」
「大丈夫だ。日中無茶しなければ、夜には動きまわれる」
三日連続でカ・ナンのために全力を尽くしてきた女たちに、自らの精力を提供し続けてきたソウタ。だが、倒れ臥したあの時に比べれば、体力にも気力にも随分と余裕が残っている。
「それじゃあ二人とも、屋敷に戻ってゆっくりしてらっしゃい」
この日の午前中は決戦前だからと皆が配慮してくれたので、夫婦揃って屋敷で休息を取った。
遠くからはもはや日常と化した大砲や小銃の散発的な発砲音が聞こえてくるが、今日杯意に介さず、暖かい日差しの下、中庭のベンチで互いにもたれかかって怠惰を貪った。
緑の羽根が美しい小鳥が飛んできたので、ヒトミはエサを手のひらに載せて差し出すと、小鳥は警戒せずに手に乗ってエサを咥えて飛び去る。
「鳥には人間の戦争は関係無いよね……」
「その代わり、生き抜くために戦い続けているけどな」
「そっか……、そうだよね……」
ゆったりしているところに、ファルルがお茶と菓子を持って来てくれた。
「だ、旦那様、そして奥様、昨日は本当にありがとうございました!」
深々と頭を下げるファルルに、ソウタは逆に詫びる。
「お礼どころか、俺が謝らなきゃ……」
「い、いえ旦那様!私の夢を叶えて下さって……」
軽食を済ませると、そのままファルルに二人は施術してもらう事に。最初にヒトミの身体を解き解すと、甘く蕩けるような声をヒトミは漏らしてしまう。
「ルルちゃん、少し手つき変わったね……」
「そ、そんな事は……」
ヒトミを済ませると今度はソウタを解す。ソウタもまた解される度に軽いうめき声を上げてしまう。
「旦那様、やはりお腰が……」
「……」
連日酷使してきた箇所だけに疲労が蓄積されていたようだった。
「ところでルルちゃん、昨日はどうだったの?」
「は、はい……。旦那様に抱いて頂けるなんて本当に夢のようでした……。奥様やリン様になされたように、私にまであのように……。ああ……」
昨日の情事を思い出し、上気して指を止めてしまうファルル。
「ファルル、その口ぶりだと知ってたように聞こえるんだけど……」
ソウタの問いに慌ててしまうファルル。それをみて笑いだしたヒトミがソウタに教えた。
「ソウタくん、実はルルちゃんはね……」
ソウタはヒトミの口から、ファルルがこれまでソウタの寝室の様子を密かに覗いていた事、そして情事以上に他人に見られたくない自力の行為まで見られていた事を聞かされ、悶絶してしまった。
「よりにもよってアレを見られていたなんて……。ぅぁぅぁぅぁ……」
「そうだよね。ショックだよね」
ソウタの頭を優しく撫でるヒトミ。
「も、申し訳ありません旦那様!つ、つい出来心で!」
懸命に謝るファルル。
「で、ですが旦那様!もう自らお慰みになるような事はなさらないで下さい!この屋敷にいて、奥様たちがご不在でしたら、何なりと私めに伽をお申し付け下さい!」
その言葉に、ソウタは完全に止めを刺されてしまった。
「もう駄目だ……。お婿に行けない……」
「とっくに奥さん二人もいるでしょ、もう!」
「じゃあファルルも迎え入れよう……」
その言葉にファルルはリンゴのように顔を赤らめた。
「ソウタくんの奥さんは私とエリちゃんで二人。リンさん、アタラさん、メリーベルさん、アンジュさんの四人が追加予約してるから、ルルちゃんも入れたら合計で七人になるよね」
「……」
「カ・ナンは原則五人までだから二人も超過しちゃうよ。その分は国にお金納めなきゃいけないね」
「そこかよ」
三人でしばらく笑い合った。
「責任とってみんな幸せにしなきゃいけないな」
「それに私たちだけじゃなく、この国のみんなを幸せにしなきゃ。それがソウタくんのお仕事なんだよ」
「そうだな……。みんなで幸せにならなきゃな」
「でもルルちゃん、今日だけはどうしてもダメだから我慢してね」
「は、はい……」
「その代わり帰ってきたら三人でゆっくりしましょう」
「ほ、本当に宜しいのですか?!」
優しく頷くヒトミを見て、ファルルは飛び上がって喜んだ。
(やっぱりみんな無事に帰ってこなきゃな……)
そんな様子を見ながら、ソウタは決意を新たにした。
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