今日も考えています

花本真一

第1話 時計

 時計を見るのが苦手です。正確には仕事をしている時に見るのが苦手です。

 このことは、大学時代のころからそうでした。教室内に飾られている掛け時計から目をそらし、腕時計は外して、鞄にしまいます。そして、ただひたすら講師と教材に目を通し、時間が過ぎるのを待っていました。

 ただ、どうしても気になる時は、腕時計の秒針を親指で隠しながら、あとどれくらいで終わるのかを確認していました。

 大学生までと思っていたのに、社会人になり一応働いている今となっても、これは続いています。職場内にある掛け時計は勿論のこと、パソコンに表示される時間にも目を背けています。幸い、時間に追われる仕事ではないので、今の所、大事には至ってはいません。

 どうしてなのでしょうか。

 三年以上考えて、一応ある結論が出ました。

 きっと見てしまうと、あとこれだけの時間が残っているのかと気が重くなってしまうのだと思います。人は楽しいことをしている時は、時間が流れるのが早いと思ったり、惜しんだりすると聞きます。

 でも、逆に自分にとってしんどい事だったり、きつい事だったりすると、流れは遅く感じると聞きます。

 これに照らし合わせるとするならば、僕にとって勉強だったり、働いたりすることは、非常に辛いと言う事になるのでしょうか。

 でも、いくらアルバイトであっても、この世界で生きていくためにはお金が要ります。そして、それを手にするためには、働かねばなりません。

 まだ、始めたばかりなので、要領が掴めなかったり、面白さを見つけるのに苦労しています。

 もし、これから先、何らかのやりがいを見つけることが出来たのなら。

 その時こそ、時計を見ることが出来るようになるのかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る