102. 独白6
そんな彼女と親しくなれたのは、ひとえに僕が彼女のためと自身を費やせるからだろう。彼女が幸福になれるのならば自分の命を、人生を差し出せる。
そう思っていた。いや、今でも思っている。ただ、ただ少し、自分でも気づいていなかった本心を理解してしまった。
結局、僕は僕のまま。いくら彼女のためと言おうと僕の本心は自己保身の塊だった。
一人ぼっちな僕に救いをくれた彼女に、先の見えない暗闇にいた僕を照らしてくれた彼女に、ただ僕は認められたかった。
ここにいてもいいと、一人で頑張らなくてもいいと。他の誰でもない恩人である彼女にこそ認めてほしかった。
彼女に認めてほしいから自分を差し出せる。
彼女に認めてほしいから頑張れる。
彼女に認めてほしいから生きていける。
こんな欲望塗れな僕ではあるけれど、幸いなのは全て彼女を優先できたことだろう。
彼女の願いを聞き入れるから僕の気持ちが表面に出ることはなく、彼女が上位に来るから僕の本心が露わになることはなかった。
これからも彼女のために出来る限りのことをするというのに変わりはない。彼女が求めていること、彼女が幸せになれることを目指していくのはそのままだ。
これまで彼女に言われたことを考えれば、自惚れでなく僕個人が彼女に良い影響を与えられているというのは確定だろう。
それがいつまでのことなのか、彼女いわく"未来のことなんて知らない"になるが…いくら僕が考えても彼女の気持ち一つで僕の進む道は変わるのだから、この思考は無駄に終わるかもしれない。
それでも、僕が自分自身を再認識できたことは僕にとって良いことだと思う。
あの子には、
鈴花ちゃんのおかげで、僕は自分自身から目を逸らさずにすんだ。というよりも、見ようとしていなかった現実を見ることができた、の方が正しいか。
なんにせよ、今の
それから、終わらせてからもう一度始めればいいんだ。
きっと彼女なら、日結花ちゃんなら軽く笑って受け入れてくれるはずだから。
否定される恐怖よりも先に、彼女の全開な笑顔が浮かんで思わず苦笑した。
一番に彼女の笑顔が見えるくらいには僕も変わったということなんだろう。
今の僕にはこの先どんな関係になるのかはわからないけれど、僕が思いつく関係性すべてになることの覚悟だけはしておこう。
彼女のファンとして、知人として、友人として、相談相手として、隣人として、パートナーとして、恋人として。
もう逃げるのは終わりだ。彼女が踏み出すことを決めたとき、僕もそれを受け入れられるようにしておかなくちゃいけない。
いいや、そうじゃないか。ずっと待っていてくれる彼女に僕から踏み出さないといけないんだ。
僕が愛する太陽の前で、格好の悪いことはできないから。自分のため、彼女のため、僕ら二人のために全力で頑張ろう。
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