第21話 俺と魔王さんと勇者さん (6)

「ハァ~、誰が自分達夫婦はですかぁ~? この優しい殿方は、先程私のことを生涯守り愛しみ尽くしてくれると告げてくれました! 魔王! 貴女ではなく! 私にね!」


 ううう……。やはり儂の女の感という奴は当たった!


 この大馬鹿者は、先程家の殿が儂に対して囁いた言葉なのに、自分自身に告げてくれたプロポーズの言葉だと勘違いをしたようじゃ~。


 と、なると? 勇者の誤解を解かねばならぬ。


 そう思うと儂は勇者へと言葉をかける。こんな感じでね。


「あのなぁ~、勇者~? お主は何か勘違いをしているようだが。家の主人が先程漏らした生涯かけて尽くし養うと言う台詞は、お主ではなく。妻である儂に囁いてくれた言葉なのだぞ。だからお主の勘違いである訳だから。とっととこの場から立ち去り何処へでも行ってくれぇ~。儂等夫婦は今後の事を相談しないといけないから忙しい~」


 儂はとにかく勇者に、この場からいなくなってくれと急かしながら言葉を告げたのだよ。ここが儂達の住んでいた世界とは違う異世界であろうとも。儂等家族の敵である勇者を。我が殿が庇い保護して守る必要はない。


 とっとと何処へでも飛んでいって、野垂れ死にすればいいと、儂は素直に思うのだよ。あやつは敵である勇者なのだから。


〈ガシャン!〉


 ……ん? 何? 何じゃ~? 何かしら金属音がした。


 と、儂は思うと? 金属音が鳴った地面へと視線を移す。


 するとどうやら勇者の奴が、儂の言葉を聞き、自身の気が荒くなり、被っていた頭鎧を脱ぎ捨てたみたいじゃなぁ~。


 まあ、儂がこんな事を思っていると。


「ハァ~、勘違いしているのは、私ではなく、魔王貴女でしょうに~。それに良く考えてみたら、魔王貴女には子供がいたでしょうに~? まさか貴女は他人との交わりでできた子供をこのひとに面倒をみさせるつもりではないでしょうね? それに貴女は亜人の国の女王なのだから、再婚相手はいくらでもいるでしょうから。その者達の中から選んで再婚をすればいいでしょう~。だから貴女の方こそ直ちにこの場から立ち去りなさい。わかりましたか~?」


 ううう……。この娘だけは、子供の分際で、亜ノ国の女王である儂に、殿と別れ、他の雄と再婚し交われと暴言を告げてきた。


 それに儂の娘は、正真正銘の殿の子なのだよ。儂は確かに殿を放置したかも知れぬが、他の雄と寝食を共にして交わりなど一切していない。


 だから儂の肢体からだは今後も殿だけの物なのだ。


 う~ん、それにしても? 亜ノ国の女王である儂のことをこれ程侮り蔑み暴言を吐いた勇者の事は絶対に許す事はできないから儂も自身の被っている頭鎧を脱ぎ、地面へと『ガシャン!』と叩きつけてやった。


 でッ、その後は、勇者の事を睨みつけながら。


「勇者~! お前の方こそ、何か勘違いをしているようだが。家の姫は、殿の正真正銘の娘なのじゃ~。だから儂が先程申した通りで、お主の勘違いなのだから、早くこの場から立ち去れ~。儂は殿と今後のことで話しがあるのだから~」


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