第19話 俺と魔王さんと勇者さん (4)

 だから儂は細心の注意を払いながら我が家の殿へと、『ゴホン!』と空咳をしながら威厳を保ちながら話すことに尽力を尽くすことにした。


「えっ? あっ? はい この度の事故はみなこちらが悪いので、慰謝料の件はお任せください。僕のできる範囲で貴女達二人へと生涯かけて償いますから大丈夫ですよ」


 儂の殿へと告げた慰謝料請求は、あくまでも離婚をしたいからと。家の殿に慰謝料を払えと申している訳ではないからなぁ~。


 あくまでも一から殿と儂は人生をやり直したい。


 特にこの世界にくるまでの儂は、殿の顔さえ見て確認ができれば、敵である勇者に殺傷されとも良いと思っていたのだが。いざ儂の愛する殿を見て確認すると、死んでも死にきれない。現世に未練が残るだけだ。


 それに先程儂が決意したことではないが、勇者が儂の殿に危害を加えるようなら。儂は勇者を道ずれにと思っていたのだが。その件もやめたよ。相打ちではなく、いざとなれば儂の最大奥義である時空砲を使用して、勇者だけ更に別の世界へと異世界転移をさせて、この世界から葬りさってやるつもりなのだ。


 まあ、とにかく儂はこんな感じで勇者に対して抗う事に決めた。


 そして殿と今度こそ仲のよい夫婦……。他人から可愛いい妃だね、と呼ばれるように殿に尽くし奉公したいと思う。


 まあ、こんな事を儂は脳裏で思案しながら「そうか、そうか、潔い。殿方だのぅ~」と、高らかな声色で言葉を返した。


 だって殿が儂の条件を素直に飲んでくれそうだからなぁ~。


「あ、あの~。魔王さま?」


 儂が自身の想い描いた策がいとも簡単に叶いそうだから、自身の心を弾ませ高鳴る鼓動を抑えきれずに喜んでいると。


 家の殿がまた気落ちをした声色で、儂に声をかけてきたから、「何だ~、男~?」と、言葉を返したよ。殿にはできるだけ儂が歓喜を上げたい程、喜んでいることを悟られないようにしながら。また儂は威厳を保ちつつ我が家の殿に言葉を返した。


 すると我が家の殿は、「僕に生涯をかえ尽くせとはどう意味なのでしょうか?」と、訳解らぬ事を雌である儂に訊ねてきた。


「そんな事は、女の身である儂の口から申さなくても分かる事ではないのか~? それに儂は、先程の車との衝突で、自身の身体のあちらこちらが痛い……。その他にも顔の方にもう二度と消えぬ傷迄入ったかも知れぬし。儂は子供だっているのだぞ~。だからお主にはちゃんと儂の事を、生涯責任を持って償い養ってもらわねば困る……。いいなぁ~? わ、分かったなぁ~? そこの男~?」



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