アラサー男の俺が、魔王と勇者の争いを中断させたよ……(商い日和)

かず斉入道

第1話 プロローグは俺の過去の出来事と思い出

「死ぬ前にあんたの子……。私も孫というものを、この手で抱いてみたかったね。本当に……」


「ご、ごめん……」


「いいよ。別にあんたが気にしなくても。只の母さんの願望を独り言で呟いただけだから。あんたが、そんなに気落ち。落ち込んで迄も気にする必要はないからね……」と、呟きながら外──。


 大きな総合病院の病室の窓から外を眺め始める家のお袋様なのだが。俺はそんな様子……。大変に寂しそうな目と瞳、形相で外を眺め。謝罪、詫びを告げた。呟いた俺と目を合わせないようにする。病院で借りた衣服を着衣し、病室のベッドの上で、上半身だけ起こし座っているお袋様を無言で見詰め続ける。続けたのだったと、過去形の台詞を俺が漏らす通りで。もう数年も前になる出来事……。


 俺自身が……。二度と思い出したくはない俺の悲しい過去を。俺は何故かふと、今日に限り。自身の脳裏で思い出し、呟いてしまったのだ。


 それも、自身が運転をする車。俺の只今のパートナーであり。相棒でもある営業仕様の白のトヨタのハイエースの運転、走行──走らせている最中に思い出してしまったのだ。


 だから俺は、今日はなのだろう? と、ふと思い。今日の日付を思い出すように思案をする。


「……ああ、今日はかぁ……。バレンタインデーの日かぁ……」と、独り言をまた呟いたのだ。


 まあ、でも、独り身、独身の俺。この齢、と世間様から言われる。呼ばれる齢になっても未だに彼女すらいない天涯孤独の俺には関係の無い日だから。今日がだと言う事を俺自身がすっかり忘れていた。いたのだ、ではいけないのだよ。俺自身はね。だってさ、俺が数年前に、最後の身内、肉親である母親(‘‘)。お袋様が天に召された日、だからね。俺は今日のと言う日を。いくら独身の俺に縁のない日だろうと忘れてはいけない事を。俺は何故か急に、過去の思い出の映像と共に、脳裏で思い出してしまったから不思議でならないのだった。



 ◇◇◇






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