猫の子、子猫のコ、コネコの子猫のコ
油女猫作
第1話
街頭が霞むような霧雨の降る日だった。
私は意味もなく、表通りをぶらぶらと散歩していた。傘は持っていない。
着物が雨に濡れて身体にじっとりと貼り付く感覚は、決して気持ちのよいものでは無かった。
通りには私の他に誰も歩いていない。
ここから我が家までは五町ほどある。走って帰れない距離ではないが、いかんせん私は疲れきっていた。
このまま、永遠に続くとも思える道を歩いて行かねばならんのか、と溜息をこぼした時、目の前に小さな影が現れた。
それは猫であった。
がりがりに痩せこけた、何ともふてぶてしい顔の猫が、道の真ん中を堂々と歩いていた。
ここは我の道だとでも言わんばかりに。
知らず足を止めた私の前に、しかし猫は通り過ぎることなく座った。
そして一声、にゃあ、と鳴いた。
餌をくれ、と言っているのか、そこをどけ、と言っているのか、全く意図が分からぬ鳴き声であった。
しかし私は、「この猫を飼おう」と、その時強くそう思ったのである。
これが、私と猫蔵の出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます