猫の子、子猫のコ、コネコの子猫のコ

油女猫作

第1話

街頭が霞むような霧雨の降る日だった。

私は意味もなく、表通りをぶらぶらと散歩していた。傘は持っていない。

着物が雨に濡れて身体にじっとりと貼り付く感覚は、決して気持ちのよいものでは無かった。

通りには私の他に誰も歩いていない。


ここから我が家までは五町ほどある。走って帰れない距離ではないが、いかんせん私は疲れきっていた。


このまま、永遠に続くとも思える道を歩いて行かねばならんのか、と溜息をこぼした時、目の前に小さな影が現れた。


それは猫であった。


がりがりに痩せこけた、何ともふてぶてしい顔の猫が、道の真ん中を堂々と歩いていた。


ここは我の道だとでも言わんばかりに。


知らず足を止めた私の前に、しかし猫は通り過ぎることなく座った。

そして一声、にゃあ、と鳴いた。

餌をくれ、と言っているのか、そこをどけ、と言っているのか、全く意図が分からぬ鳴き声であった。


しかし私は、「この猫を飼おう」と、その時強くそう思ったのである。


これが、私と猫蔵の出会いだった。

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